何度も言うようだが私はひげを尊敬している。(本人には絶対に言わない)

なぜやつを尊敬するかと言うとやつは「日本文化信望者」だからである。
まあやつのビジネスの危難のときにホンダの歴史が彼を支えたのだからむべなるかな。
またやつの「日本人に教えを請う」姿勢が謙虚であるからである。

あるときやつは突然わたしに「ハラキリ」を教えてくれときた。

「なんでや?」
「世界中で嘘をついたり責任が果たせなかったりしたときに腹を切れるのはお前たち日本人だけだから尊敬している。ほかにはそんな国はないだろう?」と言った
「まあ確かに日本人だけだろうな」
「なちゃ、お前はハラキリできるか?」

あ、最近やつは私のことを「なか」ではなく「なちゃ」と呼ぶ。何でも「なちゃ」とはベトナムの神話に出てくるパンツをはいていない子供の神様で(だらしない?)大変ご利益がある、いい神様なのだそうだがこっちの「ひげ」の件もありおいそれと信用できない。





話を戻す

「ハラキリはやったことはないが(当たり前か)、高校の時の剣道の時間で習った」
実は私は高校時代の剣道の伊賀先生という人からハラキキの作法を教わっていた
「じゃあ、今ここでやってくれ」
「なんでや?」
「新聞記者を呼ぶ」
「え?新聞?今?」

展開が見えないわたしをよそにやつは友人の労働新聞(一番ベトナムで有名な新聞)の記者に電話して30分で来るから練習しておくようにと言った

「全国のベトナム人に現代でも日本人は責任をとるためにハラキリをやっていると伝えたい」
「やってへん、やってへん!嘘はあかん嘘は!」
「しかし作法を知っていると言ったよな」
「ああ、言った。しかし実行するためではない。あくまでもサムライの心意気を知るためだ」

そうこうしているうちに記者が満面の笑顔でやってきた
フォンさんという恵比寿さんのような顔をした新聞記者はタン会長の大ファンでもあり日本大好き人間だ

余談ではあるがこのフォンさんの娘とうちの長男がその後付き合うことになるがそれはまた別の話

「今日は、ハラキリが見れるのか?」
浮き足立つフォンさんに
「ああ、作法だけだがな」とひげ

カメラをセットする新聞記者を見守る私

「さあ、やってくれ」

うれしそうに満面の笑みでひげとフォンが急かせる
「しやあないなあ」
なんか「ええようにやられてる感」があり納得がいかなかったが何十年ぶりかに以前習ったように正座してお箸を借りて刀に見立ててハラキリを演じた
まず左腹に突き立てて一気に右に引き、それでも死ねない時は上から刺して下に下ろす、ご丁寧な「十字切り」をやってやった。



次の日の労働新聞の朝刊です
何て書かれてるんかな?
ちょっと心配

ひげとのへとへとの旅は続きます

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