肉汁が口中に広がり
山椒の香りがかすかに後を追いかけてくる… 絶妙だ…

茹でタンを味わいながら
ビールを飲む私に

「藤沢の飲み屋はレベルが違いますね!」とG藤は叫んだ  
聞くと  東京の外れに住む彼は 普段の食事は9割方カレーコロッケを食べているらしく  今回生まれて初めて食べる茹でたタンの味と風味に 痛く感動した様子だ

しかしいつまでも牛の舌に興奮して居る場合ではない
時間はもう11時を過ぎている
彼は東京の端の端まで
帰るのだ
しかし茹でたタンに感動した彼は極東に帰ることに氣が進まない様子だ

気持ちは分かる  帰れば彼を待っているのはカレーコロッケのみだ
極東には茹でタンもへぎそばも 紫蘇餃子も無い

味わいの問題も在るが
健康的な面でも心配を感じた私は
「どうせ帰れ無いなら 温泉でも入りましょうか」
と言い 小田原万葉の湯へと向かった。

温泉を出た私達は平日の深夜 ひとけの無くなった広間で又ビールを飲みだした
酔いが回り初めた頃
気付くとG藤はメニューを凝視している
その視線の先を追って行くと  
そこに写るお料理は…
正に コロッケだ…

想像するに 恐らく南下したことによるホームシックだろう

私はさりげない愛情をもって 「そろそろ休みましょう…」と伝えた…

                         ベリティ藤田