未来からやって来た志麻子ちゃん | 高峰明日香の明日はどっちだ!

高峰明日香の明日はどっちだ!

SFホームドラマ。永遠の時を生きる「ジルコニア」の少年少女たちの日常と夢と性と悩みがドールによる劇場で石神井公園・池袋・新宿を舞台に繰り広げられます。闇深いです。記事は予約投稿です。

10年後の未来から、志麻子ちゃんがタイムマシンで来る。

志麻子「あたしとっても今、恵まれてると思うの。仕事2回転職したけど、そのたびお給料アップして、前の仕事のスキルも活かせて、自分の時間もあるし対人関係も良好。毎日順調なんだけど、これといって夢がないの。やりがいのあることしたいな」

 

あすか「この不景気な時に、いい就職が出来るだけで充分じゃない?10年後の未来からわざわざどうして今の私にそれを言いに来たの。海外旅行したらどう」

 

志麻子「だって未来のあすかっちってとっても忙しいんだもの、なかなかつかまらないの。戯曲書いたり小説が海外で翻訳されたり……どうしたらあんな未来が送れるのか、聞きたいけど。一番時間が取れるのが学生のあすかっちなんだもん」

あすか「私の未来は作家業で忙しいのか。よかった」

志麻子「あたしはずっと恋して生きてきたけど、いまはあたしも仕事中心なの。でも休みはたっぷり取れるから、何かしたいんだけど、習い事も旅行も興味ないの。唯一オシャレと買い物が楽しみだけど、使いまくってるわけじゃないから」

 

あすか「オシャレが好きならメイク動画撮ってみたらいいんじゃないかな?あと、ゲームとか映画鑑賞は?」

 

志麻子「メイク動画なんて撮ったら、会社の人にすっぴんがバレちゃう。ゲームは子供のするものだし、映画は地上波に来るまで待つものよ」

あすか「……意外と消極的なんだね」

 

あすか「お金があるならカフェ通いしようよ。フランス帰りのマスターが開いたカフェ知ってるけど、素敵だよ」

志麻子「コーヒーぐらい自分で入れられるもん」

あすか「マスターのブルーベリーソースがけのレアチーズケーキ絶品だよ。予約しないと行けないカフェだよ」

志麻子「あたし土日しか空かないから」

あすか「じゃ、何ならいいのさ。何が楽しくて生きてるの?好きな本とかないの」

 

志麻子「本は読まない。目が悪くなりたくない」

あすか「見事に全部NOなんだね、彼氏作るしかないんじゃないの」

志麻子「もう彼氏は必要ないわ、疲れたから」

あすか「要するに今のままが幸せなんでしょ。今の生活にスパイスが欲しいならお部屋の模様替えでもすればいいよ。あんなに恋に溺れられた君はどこへ行っちゃったのさ」

 

あすか「あるいは犬でも飼ってみたら。ご飯と散歩で無償の愛をくれるよ」

志麻子「動物は毛と匂いが苦手なの」

百鬼丸「(ムッ。面倒くさい女の子ですね、がうがう)」

あすか「だったらさぁ、資格取りまくったらいいよ。将来のことを考えて介護ヘルパーとか、司法書士とか、英検とか、漢検とか」

志麻子「勉強は嫌~い」

 

志麻子「地道な努力は嫌い。人生はドラマだもの。物の少ない雑誌のようなタワマンに住んで、流行のものを着て、いい暮らしするの。もうすぐお給料が上がるから、港区に引っ越すつもりよ」

あすか「なんだ、夢がちゃんとあるんじゃん。なんで相談するのさ」

志麻子「だって、港区に住むのは叶う夢なんだもの。その後の夢がないわ」

あすか「大丈夫、君ならすぐ次の夢を見つけられるよ」

 

あすか「あんまり退屈ならボランティアでもやってみたらどう?困ってる人いっぱいいるよ」

志麻子「困ってる人は自己責任よ。関わるとあたしのツキが落ちちゃう」

 

(志麻子、帰る)

あすか「志麻子ちゃん、10年後はなんであんなふうに育っちゃったんだろ」

百鬼丸「(仕事にもお金にも恵まれてるけど、自己投資しないんですよね。いますよね、あーいう女の子)」

 

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志麻子ちゃんはどうしてタイムトラベルまでして、10年昔のあすかっちのところへ来たのでしょう。幸せ自慢のようにも見えますが、そういう人は自慢しません。仕事にありつけない人がまだまだ沢山いる中、仕事が充実していてももの足りない人もいるのでしょうね。