いい音楽を奏でるならば、どんな家の生まれかなど重要でない。しかし、父親が偉大な音楽家であれば、それに伴うハイプに応えることが容易でないのもまた事実である。レイラ・ハサウェイにとって、ダニー・ハサウェイを父親に持つことは恵まれたことであり、彼女のやることすべてが彼のしたことと比較されるという意味で、ひょっとしたら同時に重荷だったかもしれない。しかしながら、スナーキー・パーピー、ロバート・グラスパー、スヌープ・ドッグ、メアリー・J・ブライジといった面々と一緒に仕事しながら、その歌手は、父親の功績に自分のそれに影を落とさせることなく、自分の道を進んできた。そして幸運なことに、4月14日、ブルーノート東京に集った人々は、彼女がそれを証明するのを観ることができた。一人のラッキーな目撃者として、以下に同施設でのショウのレポートを綴る。

 
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レイラが現れる約15分前、DJスパークスがマイケル・ジャクソン、プリンス、スティーヴィー・ワンダー、ルーサー・ヴァンドロスといったクラシックで、文字どおりクラウドをスパークし始める。この時点では、聴衆のほとんどはグラスを手に持ち、ただ静かにその49歳が現れるのを待っているだけだが、同DJが快活に、彼女のかける、彼らのお気に入りの曲に合わせて歌うように頼むと、静かなままではいられない。
 
完全に暖まった観客は、午後5時頃レイラ・ハサウェイを迎え入れる。彼女は最新作『Honestly』から「Change Ya Life」でセットを開始する。
 
レイラはそれから、「That Was Then」や「Y O Y」といった曲を休むことなくパフォームするが、曲が終わるごとに「今のはよかった?」と尋ね、聴く者を気遣うことを忘れない。「Summertime」終了後には流暢な日本語で「楽しんでる?」とも言い、彼らは思わず笑みをこぼす。さらに、彼女はライネッテ・ウィリアムズ(キーボード)やエリック・スミス(ベース)にもソロで演奏させると、彼らは共にスキルを見せつけ、聴衆は惜しみない拍手を贈る。
 
レイラは心温まる「When Your Life Was Low」を歌い終えると、同グラミー受賞シンガーは、亡き父のディスコグラフィーから何曲か演っていいかクラウドに尋ねる。その答えは言うまでもなくイエスであり、彼女は「I Love You More Than You’ll Ever Know」「A Song For You」「You Were Meant For Me」を披露する。彼女の声は(筆者の隣に座っていた2人の男性によると)驚くほど父親のそれに似ており、ある者たちには亡きレジェンドを想起させる。しかしながら、またある者たちにとっては、レイラはレイラだ。彼らはただ目の前でパフォームするシンガーソングライター、すなわちレイラ・ハサウェイに魅せられている。彼女の声はそのどちらの心をも打つ。
 
自身の父親に続いて、レイラはアニタ・ベイカー(「Angel」「Caught Up In The Rapture」「You’re The Best Thing Yet」)とルーサー・ヴァンドロス(「Forever, For Always, For Love」)をカヴァーし、ステージを降りる。が、当然ながらこれで終わりではない。彼女はステージに戻ると、メンバーたちを紹介し、2017年作から「Honestly」と「I Can’t」を披露。「さあレイディーズ(フェラズ)、彼(彼女)を愛してるならイェーって言って」と彼女は歌い、会場を真実の愛で満たす。
 
「Let Go」のシンガーの分厚いディスコグラフィーを考えれば、彼女は自分のセットをどんなふうにも終わらせることができたが、彼女はそれをあまりエモーショナルにすることを選ばなかった。彼女はむしろ自分なりに、クラウドに正直でいることを奨励することにショウを捧げ、彼らは身の回りの人々へのシンプルな愛の大切さに気づくこととなった。彼女のライブを観終えて、名状しがたい何かに満たされ、今夜はぐっすり眠れそうだと感じたのは筆者だけではないはずだ。ちょうど、愛する人たちと温かい夕食を共にした後のように。