皇居の中、宮中三殿と呼ばれる施設がある。いわば皇室の神社といえる最も清浄が尊ばれる場所である。主たる神殿は中央の賢所(かしこどころ・けんしょ)、ご祭神は天照大神。江戸時代までとはご神名が若干異なるが同じく皇室の祖神である。向かって左側に皇霊殿。お祀りされているのは歴代天皇・皇后、皇族方の御霊である。そして右側に神殿。ご祭神は天神地祇(てんしんちぎ)。

 

 

今回は賢所に57年間奉職されてきた高谷朝子(1924-2018)さんの書籍「宮中賢所物語」を紹介したい。高谷さんは昭和18年(1943)から平成13年(2001)まで奉職されたのだが、内掌典というのは女性の掌典(宮中祭祀をつとめる)のことで、戦後は国家公務員ではなく内廷の私的職員である。

 

 

宮中祭祀の根幹である賢所は平安時代に成立し爾来約1000年間であるが、これまでは秘密のヴェールにつつまれた事柄の一端をこの本で説明しており、非常に貴重な体験も記されている。

 

 

私も書籍で購入し何度も熟読玩味した。貴重なカラー写真を見るだけでも有意義である。今ではこちらでしか着けないであろう装束、髪型、独特の言葉、作法、年中行事、日常生活などが網羅されておりこれらも貴重である。その厳しさは伊勢の神宮内宮よりもあると感じる。「居ますが如く」の世界である。人によっては宮中祭祀の本質を感得することもあろう。

 

 

現在、皇室祭祀は私的な事となっており高谷さんが下りた時点でかつての伝統にも変化があったと感じる。すべては口伝で継承されている祭祀・作法は不変であるが、内掌典の上席である「おかしら」さんはどうなるのだろうかとも思う。

定員は5名。縁故で採用されるという。そして4年あまりで交代するらしい。

 

日本神話の世界のように神に嫁ぐというのは最早むかし話になってしまったかもしれない。

 

 

本書はインタビューがなされ独り語り形式で記されており、そこかしこに麗しい日本語が使われている。今の時代では使われなくなった言葉はとても魅力的である。殊の外女性にお勧めしたい。女性の真価を充実させたい人には必読の書である。ここにはセレブでは足元にも及ばない世界がある。もとより外界とは隔絶された世界であるが。

 

書籍は現在もネットなどでも購読可能である。通常では目にすることはできない美しい内掌典の姿をカラーで見られる。

 

また文庫版でも出版されておりタイトルは「皇室の祭祀と生きて」に変わっている。内容は同じで写真の数とモノクロになっているのが違う。

 

 

本日は高谷さんの一年祭