あたしは今まで、ふたつのカテゴリーに何もかも当て嵌めて生きてきた。
「YES」と「NO」。「好き」と「嫌い」。「善」と「悪」。「味方」と「敵」……他にも沢山。
スキなものはスキ。キライなものはキライ。……何もかも、そのどちらかに分類してきた。
―――でも、この世にはそれらのどちらでもないものもある。それをあたしは今頃知った。
退院してリトゥラ湖に散歩に行き、秋の夜風を感じているとぼんやり湖畔に佇むおじさんがいた。
不審だったので声を掛けてみる。
彼は最初はあたしをレディなんて言って慇懃に接してきたけれど、途中でいきなり様子が変わった。
「これからする質問の返答次第では殺す」とまで。
何ごとかと思ったら、ロザリオのことを訊ねられた。あたしがガルーダから借りた、水晶のロザリオ。
よくよく聞いてみると、どうもおじさんがガルーダにロザリオをプレゼントした人らしい。
そりゃそうよね……友達にプレゼントしたはずの物を他人が持ってたら、当然怪しむよね……。
しどろもどろになりながら説明すると、おじさんはすぐに信用してくれた。
説得できなかったら首を刎ねられてたんだろうかと思うと、背筋が寒くなる。
おじさんはロザリオの本当の持ち主である彼のこと、よく知っているらしい。
そして、あたしのことも瞬く間に看破してしまった。
「レディは白か黒かの考え方が目立つ。それ以外の選択肢を持ってみるのもいい」
彼の言葉に、あたしはハッとした。
確かにそうだ。無理矢理にどちらかに当て嵌めてしまうことは出来ても、それは本当の理解じゃない。
白か黒かで割り切れてしまえるほど、この世は単純明快じゃない。
無数にある価値観を理解しつつ、それを整理する技量が必要だと思った。
―――実りの多い夜だったけれど、まあ、難しいことはひとまずさて置いて。
最後に彼に教えてもらったこと、まずはそれを試しに行こう。
……怒られるかな……。
遭遇者:ラーズ