吸血鬼は全て倒さなければならないと、ずっと教えられてきたけれど。
それが必ずしも正しい事ではないって、フランネールに来て分かってきた。
人間に、善人と悪人がいるように。
吸血鬼にも、善人と悪人がいるんだ。
施療院から退院して、何日かぶりに自分の部屋へ帰ってきた。
暫くベッドで眠って、夕飯の買い物にでも行こうと思ったら近くの酒場で乱闘騒ぎ。
その原因になったのは、以前も会った吸血鬼・ヴァレンタインだった。
酒場から外に出る彼を待ち伏せして、彼と会話を試みた。
本当に罪もない人を襲わないのか?吸血鬼なのに、同胞である吸血鬼を本当に倒せるのか?
彼の前で指を切って見せ、血も見せた。
彼を試したのだ。―――でも、彼はあたしの誘いには応じなかった。
今でも信じられないけれど、彼はどうやら本当に人を守る吸血鬼らしい。
信じられないというのは、彼が、じゃなくて。今まで全て悪だとばかり思っていた吸血鬼たちの中に、
彼のような存在がいたという事が……という意味で。
あたしは今までの認識を改めないといけない。
けれど、急には無理だ。あたしの頭の中には、夜族必殺のヴァレンティン一族の教育が染み付いてる。
だから、彼と約束した。
彼がもし血の渇きに屈して、罪人以外の罪のない人を襲ったら―――あたしが、彼を滅ぼすと。
きっと彼はあたしとの約束を守ってくれるだろう。
飄々とはしていても、彼の瞳の奥の意志はとても強かったから。
彼に不思議なクッキーを貰った。
なんでも、食べるとそれから向こう一週間、喋ると語尾に「ござる」がついてしまうんだとか。
イタズラをする為に作って、あたしにモニターして欲しいんだって。
イタズラなら子供の頃から大得意だからね!手始めに誰を生贄にしようか……。
遭遇者:ヴァレンタイン