あたしはどうにも、腹の探り合いというものが苦手だ。嫌いと言ってもいい。
自分の素直な感想や感情を隠して、本音とは裏腹の事を喋るなんて器用な事は出来ない。
だから、誰でもちゃんとまっすぐ眼を見て話せば―――きっと本音で話し合えるって。そう思いたい。
勿論、それが並大抵の苦労でない事も分かっているけれど。
畑を踏み荒らしては農作物をダメにする小鬼をなんとかしてくれっていう依頼を受けて、朝からゾックの枯れた森で小鬼退治。
でも、朝から歩き回って倒せたのはたったの三匹ぽっちだった。
ベテランのハンターからすればお話にもならない戦果なんだろうけど、今のあたしにはこれが精一杯。
それでもこれで多少は農作物を荒らされる心配もなくなるかなと思って、討伐の証拠に小鬼の手首を持って帰ろうとしていたら―――いつのまにか、近くに人が立っているのが眼に入った。
口も態度もとても悪くて、正直言ってキライなタイプの彼。
けれど関与を避けようとあたしが帰ろうとすると、彼はあたしの忘れ物を指摘して、ちゃんと持って帰れって忠告してくれた。
血まみれのあたしを見て、心配もしてくれた。
彼は皮肉たっぷりの笑みを零すだけで、決して本音を明かしてはくれなかったけれど。
笑顔より泣き顔の方がいい、人を困らせるのがいいと彼は言っていた。
けれど、本当にそう思っているのなら、あたしの血をわざわざ拭ってくれたりしない。
くしゃくしゃになって酷い状況だったあたしの髪を、梳いてくれたりはしない。
だから、彼の事は天邪鬼と呼ぶ事にした。
天邪鬼なあの人がいつか、素直に笑ってくれたら嬉しい。
遭遇者:カイム