この世は広い。
この世にはあたしの知らない国、人々、モンスター、風土や食べ物―――とにかく様々なものがある。
そのうえ、この世の他にも天国と地獄なんてものまであるらしい。
あたしの知っているこの世の知識なんて、本当に本当にちっぽけなものなんだ―――つくづくそう思う。
ちょっと野暮用でフランネールから一日離れ、夜になってリトゥラ湖を経由して帰る道すがら。
フラーネ様の祠にお参りしている人影を見つけて、その方に歩いていった。
ひょっとしてヴァンパイアなのかなと思ったけれど、彼はどうやら人間のようで。
いかにも剣士然とした、鋭い気配は今まで逢った誰とも違うものだった。
彼はヴァンパイアとたくさん闘ってきたようで、あたしがヴァンパイアハンターだって名乗ると幾つか忠告をしてくれた。
曰く、ヴァンパイアの中には恐ろしい力を持つ者がいる。自分の父である死神を退けるほどの強さを持った者がいる―――。
彼が死神の知り合いを持っているというのも驚いたけれど、死神をも倒すヴァンパイアがいるという話にあたしは戦慄しない訳には行かなかった。
そんなのに遭遇したら、あたしはいったいどうなってしまうんだろう?
考えただけでも身体が震えてくる。
それから彼は、どうやらセリの知り合いらしい。
自警団に入ると言っていたから、そこでセリにも逢うことだろう。
彼はきっと、街の治安を護る頼りになる団員になってくれるはず。
彼には、もっともっと教えてほしい事がたくさんある。
彼にごはんを奢る代わりに、また会って話をしてくれるように頼んだ。
あたしには、知識も経験もなさすぎる。
彼に沢山教えてもらって、いつかきっとあたしも誰かに教えてあげられる、そんなヴァンパイアハンターになりたいな。
遭遇者:ガルーダ