絶対に正しいことって、この世の中にあるんだろうか?
そんなものは神を信じる者の狂った妄想だって、とあるヴァンパイアが言っていた。
絶対に正しいことがただの妄想でしかないのなら、あたし達は何を寄る辺にして生きていけばいいんだろう?
正しいことを否定する彼は、何を寄る辺にして生きているんだろう。
お墓にいた彼の名前はエーリク・シュタイナー。
彼はヴァンパイア。あたしはヴァンパイアハンター。
彼とあたしの間には、闘いしかない。妥協も和解もない―――それは少なくとも、現時点では絶対に正しいこと。
彼もまた、かつて逢ったダンピールと同じくあたしのパパとママのことを知っているようだった。
それなら、あたしのとるべき道はひとつ。親の代からの因縁に決着をつける、それも絶対に正しいこと。
彼は、あたしが言葉で挑発すると烈火の如く怒った。そしてあたしに人間への罵倒をぶつけてきた。
あたしは今まで、あれほどの怒りを向けられたことはない。
白銀鴉もピエールも、人間など何するものぞというヴァンパイアらしい性根の持ち主だった。
けれど、彼からは余りそういう感情は得られなかった気がする。
彼から感じたのは憎悪、―――それから悔恨?彼の言葉にはひどい苦しみが篭っているような気がした。
望まずして不死の生命を与えられ、死ぬ事も出来ずに彷徨う。
想像を絶する苦しみじゃないかと、少し思った。
彼には、絶対にこれだけは正しいと信じられる事はないのだろうか?
彼にまた遭ったら、訊ねてみよう。―――避けられない闘いのさなかに、それが許されるのなら。
遭遇者:エーリク