満月の夜に、竜岩へ。
満月の晩は、人狼や吸血鬼が最も力を発揮する晩。そんな日に外をウロウロするのは、我ながら自殺行為だなと思うのだけれど……生憎明日のパンを買うお金にも困るくらいだったから、仕方がない。
村にいた頃は、寝てても村の人たちがパンやミルクを分けてくれてたから、こんな苦労知らなかった。
世知辛いね、世の中……。
賞金首を捜していると、戦士っぽい男の人に会った。
なんだかすごく人懐っこい、言うなれば……うーん、よく慣れた犬みたいな人。
彼―――ゼンは自分の事をフリーターだと言った。
どうにもあたしは、逢った人がたまに言う「無職」とか「フリーター」とかいうのが気に食わない。
男だったらいい歳こいてモラトリアムってないで定職につけ!とか思うわけデスケド。
彼があんまりのらくらした態度を取ってるもんだから、なんだか腹が立ってきて。思わず剣を向けてしまった。
といっても勿論彼を殺そうとしたわけじゃなくて、彼の腕を確かめようとして。
言葉だけじゃ伝わらない事は、剣を交えて伝えるに限る。
剣を向けたお蔭で、彼の事が少し分かった。
彼は強い。
「こんなの辻斬りと一緒だ」って怒られたけど、仕方ないわよね。
言葉で本音を言ってくれないなら、これが一番の方法だから。
遭遇者:ゼン