いつまでも宿屋に部屋を取ってたんじゃお金がいくらあっても足りないという事で、部屋を借りた。
裏路地のなんだかあんまり治安のよろしくなさそうな場所だけど、経済的問題から妥協。
家賃が格安な代わりに物凄く汚い。聞けば、ずっと使われてないという。
暫く掃除に専念してたら、すっかり外に出る機会を失ってしまっていた。
これからもっと外に出て、トレーニングしないとね。
暫くぶりに買い物以外で外に出る。目的地はグレニッツ廃坑。
なまった身体を鍛え直そうと、ちょっとした冒険に出掛ける事にしたのだ。
廃坑に入ってすぐに、奇妙な相手に遭遇した。
ピエロのような奇妙な格好をした、男……うーん、多分男。
ニタニタ笑って、慇懃無礼な態度がひどく鼻につく。
イタズラが好きなんで、暇潰しに暗がりにやってきた人間をからかってるという。
あたしももちろんビックリさせられた。坑道の中にいるコウモリを殺して、その血や内臓をブチまけられたのだ。
おかげであたしの一張羅はグチャグチャ。血まみれで二目と見られない姿になってしまった。
怒って鞭を一撃見舞ってやったら、まともに食らってちょっぴりウサが晴れたけど、反撃されちゃって。
―――首筋にキスされた。
もしあいつがヴァンパイアだったら、確実にあたしは吸血鬼化してただろう。
あいつはあくまでイタズラのつもりだったみたいだけど、あたしにとっては恐怖以外の何物でもなかった。
もう、今回のようなヘマはしないけど……あたしは魔物とどう接していいのか、分からなくなってしまった。
ただ、ピエロが嫌いになった事だけは確かだ。
遭遇者:イャン・ドゥ