「第四回 調停③」

 
女性調停委員と共に、再び話し合いの部屋へ入る。


調停が成立したこともあるのか、男性調停委員がいつもより真面目な顔で話し始める。


男性「婚姻費用の方ですが、月12万円でということで決まりました。、、、私さん、よろしいでしょうか。」


私 「はい。」


男性「それでは今から相手方にも部屋へ入ってもらいます。」


先生「あっ、すみません。クズさんは出られますか?」


女性「出られると言ってみえましたよ。」


先生「わかりました。」


男性「よろしいですか?では…」


女性調停委員が呼びに行かれた。



今から旦那が来るんだ・・・・・


穏やかな顔をしているのは何だか違うし、怒っている顔をすればいいのかな・・・・・


真顔でずっと旦那を見続けていればいいのかな・・・・・
 

それとも逆に一切見ないのか・・・・・・


何が正解かわからない。


だけど、旦那がどんな顔を現れるのか、気になる。


そんなことを考えていると、ドアをノックする音と共に、女性調停委員が。


続いて旦那代理人、そして旦那登場。






頭の中でどうしようと考えていたけど、私は咄嗟に無表情で旦那を見た。


無表情というか、死んだ目をしているだろう。


旦那は一瞬私の方を見ると、露骨に嫌そうな顔をした…


死んだ目とはまた違った、初めて見る旦那の表情にショックを受けたが、それと同時に、なぜ私がそのような顔をされなければならないかという悔しい気持ちも込み上げてくる。


旦那の一瞬の表情で、全く反省していないこと、そして、私のせいで自分の思い通りに事が進まなかったと思っている事を悟った。



相手方が席に着くとすぐに裁判官も来て、淡々と調停調書が読み上げられていくが、面白い程全く頭に入ってこない。


早口で裁判官が振込口座等の確認をし、あっという間に終わり、呆気なく解散。


感情論なしの事務的な作業が終わり、外面の良い旦那は丁寧に、「失礼しました」と言って部屋を後にした。


先程の表情といい、あれが何年も共に生活をした旦那なんだ、子どもたちの父親なんだと思うと、非常に情けなく、心にぽっかり穴が空いたような気持ちになったが、ここまできたらそう言っていても仕方ない。


悲しみ落ち込むのは今ではない。


今私がやれる事をしなければならないのだから・・・・・


先生とは少し話をして別れたあと、Tさんへ報告をさせていただく。