言葉の力 第五話 | うつ病予防の為に~一銀クリニックブログ「心の処方箋」

うつ病予防の為に~一銀クリニックブログ「心の処方箋」

平成25年、沖縄タイムスにて好評連載後、書籍化されたメディカルエッセー『心の処方箋』。
その著者、一銀クリニック院長の城間功旬が、うつ病予防の提案として“言葉の力”をお届けします。
皆様の心の悩みを軽くする読むクスリになれば幸いです。


テーマ:
心の三層構造を知ろう

無意識に散りばめられた色メガネ。
それらは、どうして出来たのでしょうか。

私の思う「心の三層構造」で説明します。
まず、心の成り立ちに思いをはせましょう。
生まれた時は心には何も書かれていない真っ白な状態で、存在しているのは意識(心の第一層・周囲を認識して判断する能力)のみです。
自他の区別もありません。
母親と一心同体です。
それから、まず意識が自他を区別し、それから、親子・兄弟の認識、私は人間・男・女である等、自分と家族の関係、そして周囲の世界への認識が広がって行き、心の底にある無意識の記憶の部屋に「これは~である」とどんどん記憶が蓄積されて行きます。
成長していく中で、外界の世界で色々な体験をして、その体験も記憶として蓄積されて行き、無意識の領域に「記憶の蓄積の部屋」が出来て行きます。
これが心の底の一番奥の部屋、第三層になっています。

その第三層の上に出来るのが第二層「思い込みの部屋」です。
ここも無意識です。
生きてゆく体験の中で、印象的な出来事から、意識が強く感じ取り、これは生きていく上での大切な考え方の指針・法則であると認識したものが、体験の記憶の蓄積の部屋から特別に抽出され、生き方の法則である「思い込み」としてセッティングされて散りばめられていきます。
これが心の第二層「思い込みの部屋」です。
例えば、
「男はこうあるべき(弱音・泣き言を言ってはいけない)」
「こういう時はこんな行動を取らないといけない(弱い人は助けなければならない・強いものには巻かれろ)」
「人がどう思うか気にしなければならない(他人の目線が大事)」
「親・上司からは絶えず誉められなければならない(いつも一番でなければならない)」
「自分はこうあらねばならない(完璧でなければならない・信念は貫かねばならない)」
「人は信じられる・信じられない」等、
生きていく上での判断基準となるので必要・不可欠で本当に大切なものです。
自分と他者・社会との関係のあり方、ポリシー・プライド・モラルも入っています。

こうして出来た「心の三層構造」を、海に浮かぶ三角形の氷山に例えますと、一番上の海の水面より上に出ている部分が「意識」です。
海の水面よりは下は無意識の領域で、意識の領域よりもはるかに広大です。
意識のすぐ下が「思い込みの部屋」で、さらにその下が「記憶の蓄積の部屋」です。
私達に普段動いていると感じられるのは意識のみです。

心の三層構造


一番重要な事は、「意識」と「思い込み」の関係です。
意識が無意識の第二層の「思い込み」にかなり執着していて、「意識」は「思い込み」の指針に添って動くという事です。
ただ、その思い込みが、程の良い程度・正しい認識であれば良いのですが、極端に偏っていたら、どういう生き方になるでしょうか。
私は「思い込み」の中で、極端に偏っている思い込みを「色メガネ」と呼んでいます。
うつ病の発症と関係する事があります。

見方を変えますと、信じがたい事かもしれませんが、操り人形師(思い込み)が人形(意識)を操って動かしていると言えます。
操り人形師が良い人なら人形もよいように動きますが、悪い操り人形師だと、人形も悪いようにしか動けません。
人形(意識)は自分で動いているつもりで、操られているなどとは、夢にも思いません。

思い込みによる意識の操りの例をあげて説明します。
幼少期の体験(親・親戚からの虐待、兄弟・友人からのいじめ・裏切り・詐欺等)から、深く心が傷ついたために、無意識に「人は信用できない」と書き込んだとします。
すると世界はどう見え、どうなって行くでしょうか。

①人と接する時は絶えず緊張する。
②裏切られる事が怖くて親しい人間関係が作れない。
極端な場合、
③相手をだましたり、傷つけたりしてもよい
とまで、思うかもしれません。
孤独でつらい世界で何かで紛らわすしかないかもしれません。

私が人間不信に陥っている人に話す事は「ふと立ち止まって過去を振り返って見て下さい。その時は気がつかなかったかもしれませんが、よくよく考えると誰か信頼できる人間はいなかったでしょうか。」という事です。
よくよく思いだすと、中には、必ず信頼できる人達がいた事を、思いだせると思います。
親、友人、近所やバイト先のおばちゃん、学校の先生。
もしかしたら、これから出会う誰かかもしれませんが。
「人は信用できる」と思い込みを書きかえると、親しい人間関係が出来、緊張も無くなり、相手をだましたり傷つける事も無くなり、心がいつも安定して楽しくなる事と思います。

信頼できる人を思い出したら、こう書き換えてみてはいかがでしょう。
「人はたくさんいるので、信頼出来ない人もいるが、信頼できる人もいる。それを見極めて付き合えば良い」と。
きっと世界が変わると思います。
間違って書かれた「色メガネ」(操り人形師)は、書き換えていきましょう。

心の処方箋


イラスト:ウエズタカシ

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