毎日が、宝石だった。
ボクはボク。
本当の名前は他にあるけれど、みんなは「ボクくん」ってボクの事を呼ぶ。
だからボクはボク。
ボクは今、船に一人で乗っている。
お母さんがもうすぐ赤ちゃんを産むから、夏休みの間、親戚のおじさんの所に預けられることになったんだ。
船の中でボクは知らないお姉ちゃんに話しかけられた。
お姉ちゃんはボクがこれから行く島「富海(ふみ)」に住んでいるんだって。
でも普段は島外の高校に通っているから、夏休みの間だけ島に戻って来たみたい。
話をしているうちに仲良くなったボクたちは、島でも遊ぶ約束をしたんだ。
ボクはさんさんと照り付ける太陽に向かって手をかざしてみた。
これから始まる長い夏休み。
ボクは楽しみでワクワクしたんだ。
小さな小さな港に着くと、そこにはおじさんたちが待っていてくれた。
いとこのタケシくんとシゲルくんも一緒だった。
タケシくんは小学5年生、シゲルくんはボクの一つ下の小学2年生。
何年も会っていないから、二人の事をボクはほとんど覚えていなかった。
でも仲良くなれそうな気がするよ。
一番いい風が入ってくる部屋なんだって。
ついでに、食堂で作っているごはんの匂いもね。
なんだかお腹が空きそうな部屋だなあ。
もうすぐ晩御飯になるから、それまでの間、家の周りを探検しよう。
そう思って部屋を出ると、「書けない、書けない」って言いながら廊下をウロウロするお姉さんと出会った。
お姉さんの名前は「月夜野すみれ」、略して「つみれ」って言うんだって。
つみれさんはマスコミから逃げているみたい。
何をしている人なんだろ。
つみれさんの部屋はボクの隣。
カンヅメ部屋に押し込められた19歳の小説家なんだって。
部屋の中に招待してくれたけど、なんだかすごく散らかっていた。
見なかったことにしてあげよう。
ご飯は民宿と外廊下でつながっている海の家で食べるんだ。
冬はちょっと寒いみたい。
今夜の献立はカレーライス。
ボクの大好きなメニューだ。
いっただきまーす。
みんなとワイワイ話しながらの食事はとっても楽しかった。
気が付くと辺りはすっかり日が落ちていたんだ。
気になるけど、今日はもう寝よう。
あ、でもその前に日記を書いておかなくちゃ。
おやすみなさーい。
こうして1日目はあっという間に終わったんだ。
朝ご飯を食べ終わったら、船の中で会ったお姉ちゃん(靖子さんっていうらしい)がやって来た。
そうだった、島でも会おうって約束してたんだった。
今日は、お姉ちゃんの家に案内してくれるんだって。
お姉ちゃんちは公園の上のまあるい屋根の家だった。
まるで天文台みたい。
お姉ちゃんの部屋は日当たりが良くて、とってもおしゃれな感じ。
それからボクたちはいろんな話をした。
家族の事、お姉ちゃんの妹の菜園のこと。
あっという間に時間は過ぎた。
いつでも遊びに来ていいよって言われたから、また今度遊びに来よっと。
そうだ、昆虫採集をしようかな。
あの昆虫採集セットはタケシくんが昔使っていた物なんだって。
今は使っていないから貸してくれたんだ。
虫取り網を「えいやっ」と思いっきり振って…
ボクが虫取りをしていると、今度はおじさんが釣り竿を貸してくれた。
なかなか釣れないな。
あ、引いてる引いてる。
小さなシロギスを釣り上げた!
初めてにしては上出来上出来。
釣りに夢中になっていたら、あっという間に晩御飯の時間になった。
晩御飯の話題はやっぱり釣りの事。
大きな魚を釣ってみたいな。
お姉さんのチョコちゃんは中学1年生で、妹のカコちゃんは小学5年生なんだって。
ボクより年上だ。
なぜか、どちらが魅力的かボクが決めることになっちゃった。
最初の宿題は、公園の中に隠された二人の宝物を探すこと。
どちらの宝物を見つけたかで勝敗をつけるんだ。
ボクは遊具で遊んだりもしたけれど、なんとか二人の宝物を見つけることができたんだ。
2つとも見つけたから、勝負は引き分けなんだって。
こんな宿題があと6回も出されるのか。
でもなんだか楽しみだぞ。
ボクの夏休みはまだ始まったばかり。
明日はどんな事が起こるんだろ。
昆虫採集に釣りと、宿題そっちのけで遊びまわったあの夏の日。
そうそう、夜の森で度胸試しもしたっけ。
木に蜜を塗ってカブトムシやクワガタを採ったりしたな。
そんな夏休みを思い出させてくれる作品です。
最終日に宿題に追われたのもいい思い出です。
【今回紹介したソフト】