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うしずのです。
この前、家の片付けをしていたら「バガボンド」の単行本が出てきたんです。吉川英治先生の小説「宮本武蔵」を井上雄彦先生が漫画化した作品です。「ああ、この漫画よく読んでたな。懐かしいな」なんて思ってパラパラっとページをめくっていたら、引き込まれてしまいました。

とにかく絵が凄まじいのです。上手いだけじゃなく、線が息づいている。躍動している。尋常じゃないエネルギーが注ぎ込まれているのが伝わってきます。もう芸術の域ですよ。
とんでもない密度で描き込まれたコマもあれば、引き算の美と言ってもいい様なシンプルな絵のコマもあり、どちらの表現も出来るのは凄いと思います。
たまにですけど何をやっているのか分からないコマもあります。
説明的なコマを挿まないのはテンポが悪くなると判断したのでしょうか?それとも説明しすぎるのはダサいと井上先生は思っているのでしょうか?
出てきた3冊は吉岡一門と武蔵の七十対一の決戦と、その後の辺りです。
私、好きなシーンがあるんですよ。吉岡一門の一人が、自分の方は七十人いるから誰かが武蔵を倒すだろうと、勝負は自分とは無関係な所で決するだろうと思っていた。自分の覚悟が足りていなかった。と反省するシーンです。
人間臭いのと、もしかしたら吉岡一門にはこの人以外にも同じ様な気持ちの人が何人もいて、それが敗北の原因の一つになっているのではないか?と思わされ、七十人が武蔵一人に負けた事へのリアリティーが生まれているんですね。・・・。それでも七十人を一人で倒すなんて嘘だろって感じですけど。
私、恥ずかしながら原作小説は未読です。
でも昔、役所広司さん主演のNHKのドラマ「宮本武蔵」は夢中で観ていたんです。こちらも原作は吉川英治先生です。
ドラマ「宮本武蔵」で、武蔵は吉岡一門との決闘の場に事前に出向き、刀を何本も隠しておくんですね。刃こぼれして使えなくなった時のためのスペアとしてです。
決闘が始まってから、わざと一人しか通れない狭い道に逃げ込んで、追ってきた敵を倒していくんです。道幅が狭いから周りを複数人に囲まれないし、一対一で勝負出来る訳です。そうやって策をこらして戦うんです。
でも「バガボンド」の武蔵は剣と己の肉体と魂の力で真っ向勝負していくんです。
どちらの武蔵が原作に近いのかは分かりません。
そして戦いが終わり、傷ついて床にふしている武蔵に、幼なじみの又八が語りかける場面も良いんですよ。見栄っ張りで虚言癖の又八が武蔵への正直な思いを吐露するんです。ダメ人間の又八ですが、憎めない魅力がある奴として描いている所に井上先生の優しさを感じます。
鬼気迫る作品「バガボンド」。読み返してみて圧倒されました。本当に凄い作品だと再確認しました。
おかげで家の片付けは全然進みませんでした。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。