先日、薬丸岳さんの「Aではない君と」を読み終えた。薬丸さんの作品は少年犯罪を

扱う物が多い。映画化された「友罪」が有名だが、これも似た作風である。

 

 ネタバレにならない程度に簡単に内容を書く。

 離婚した妻と暮らす14歳の息子が殺人容疑で逮捕された。心を閉ざし何も語らない

息子に対し、弁護士も交えて何とか真実を知ろうと奔走する父。徐々に明らかになる

真実はとても重たい。加害者にも相応の言い分があるので、動機は理解できる。

しかし取り返しのつかない事をしてしまったのに反省しているのか分からない。

 やがて少年院を出て、働く場所を得て安定した生活を得てもそれも長く続かない。

この辺りは「友罪」と似ている。勇気を振り絞って被害者宅に謝罪に行くが…。

 

 面白かった、とは言えない。考えさせられた、と言うべきだろう。容疑者が口を

閉ざしていて、なかなか犯行時の状況が明らかにならない。動機も不明。少年審判の

進行の中でちょっとしたどんでん返しがあるし、ホワイダニット(why done it)の

ミステリーとして読む事も出来る。しかしそれよりも少年犯罪に対する罪と罰、贖罪

がテーマの社会派小説と受け取った。終始重苦しい雰囲気が続き、少々読むのが

キツかった。正直ちょっと苦手な作風かもしれない。

 

 息子(翼)が余りにも何も語らないのでストーリー展開が遅くてかなりじれった

かった。息子を引き取り共に暮らす母が、安いとは言えない養育費を払いながら

数カ月に一度面会するのみの父を責める場面には理不尽な気がした。また、子供を

持つという事は、子供のした事に対する監督責任、賠償責任、果ては社会的制裁を

負う可能性がある事である。それを再認識させられ、私は自分に子供がいない事に

ホッとしたのも事実である。