invert城塚翡翠倒錯集/相沢沙呼 | USHiROAD

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138冊目
invert城塚翡翠倒錯集/相沢沙呼

読後感は素晴らしい。Sに近いA+でした。
テレビドラマ化もされた有名な作品ですね。
ドラマの前に一作を読んでましたが、
本作も描かれるということで観てませんでした。
ネタバレ嫌なので。

本書はタイトル通り倒錯叙述のスタイルをとった3つの
事件で構成されます。それぞれ別の話なので、短編集みたいな感じです。正確には一話ずつが長い中編集とのこと。
倒錯叙述とは何かがわからない方も多いと思います。
今思えばテレビドラマのミステリでこのスタイルは
斬新だなと思いますが、倒錯叙述の代表的なものは
テレビドラマの『古畑任三郎』ですね。

最初に犯行が描かれ、どうやって主人公はそこに辿り着く
のか、そして解決編でそれが明らかになる。

これが倒錯叙述なのですが、本作はいいのか?という
くらい(まあタイトルが倒錯叙述なのであえてなのか)
『古畑任三郎』のパロディが出ます。
というか、それに則って話が出来ています。
だからと言って興醒めしたり、作品の質を落としたり
している訳ではないのが著者の凄さだと思います。
普通だと『古畑任三郎美女になって解決無双する』
くらいの2次創作感が出るのですが、
台詞回しで(意識的にかも)それがふわっと香る
くらいで、ミステリ小説の良さからは逸脱しません。

本書の冒頭にも書いていますが、
必ず第一作の
『霊媒探偵城塚・翡翠medium[メディウム]』から
先に読まないと、第一作の良さが無駄になります。
しかし、これをどうドラマで描いてるのかが
めちゃくちゃ気になるので、本作の続編を読んでから
ドラマも観ようと思います。

あらすじ

1.
実質ふたりで立ち上げたITの会社で、技術的な
面を支えた男が美味しいとこどりした男を殺害する。
そこにヒロインが絡んできて…

2.
卑劣な男を殺害した小学生の女教師のもとに
スクールカウンセラーとして現れた
ヒロインが現れて…

3.
秘密を握られた元刑事の探偵業の社長、
冷静沈着で、『犯罪回のナポレオン』と
称される男と警察の関係者という探偵の
ヒロインの戦い。

ネタバレを極力おさえて紹介すると、
このような内容です。

感想はネタバレを含むので、未読の方はここまで
読んだらやめて、読んだ後にこれ以下を読んでください。



***




感想

前作も解決編とも言える最後の章で度肝を抜かれましたが、
今回も正面から受けようと思った球が斜め上から首筋に
激突するような衝撃でした。
文書ならではのこの人物転換をドラマはどうしたんかなぁと気になります。(メディウムと連続でやるから最初からその設定なのかも)
前作はすべてはクライマックスのための構成だったので、
それまでの短編的な話はミステリ好きにはやや物足りなかったのですが、今回はそれぞれ独立した話なので、
技巧的なものはライトではありますが、読み応えがあり
面白かったです。古畑世代は楽しめるでしょう。

二つ目の話で犯人となる女性教師が城塚翡翠のぶりっこ演技に対して一作目で自分が真相を知るまで感じてた
印象を言ってくれるのもすかっとしました。

最後の話は珍しく翡翠が苦戦してると、何度も負けたと
思ったところの最後の爽快さは素晴らしかった。

続編も楽しみです。