市内に、かつて手広く呉服屋さんをなさっていたTさんという方がいます。

着流しこそ着てはいませんが、何かにつけて通な方です。

野暮なことは大嫌い、明るく語らい、ときにギターを爪弾いて、さくっと帰っていく、おしゃれなひと。(三味線も弾けるそうです…)

 

5年ほど前になりますが、そのTさんが、わたしの着物を見て「おめし…(なんとか)…」と、つぶやきました。

その頃のわたしは単衣と袷の違いがわかったくらい、「和服=絹織物と、それ以外」という程度の認識でした。

 

きっと着物の布地のことを「(それは)おめし…(というものだよ)」と教えてくれたのだろうと、あとあと調べるとシボのある布地を「おめし=御召」というそうで、それにしては表面ツルツルしているのに、なんで?の疑問が残っていました。

 

この「御召」、生産された地名を頭につけて「白鷹御召」(山形県白鷹町)/「塩沢御召」(新潟県南魚沼市塩沢)などと、呼ばれるようです。

細かい亀甲文、「御召」ではよく見られる柄 (._.) φ メモメモ わたしも少しはわかってきました。

 

 

 

その「塩沢御召」(本塩沢)の訪問着と、今回たまたま縁があり、しつけ糸もついたまま、わたしの手元に。

緑地に黒の亀甲文が入っているので、遠目に落ち着いた緑色…老竹色というのでしょうか。(若竹ばかりが色じゃない)

 

七宝の刺し子刺繍が裾と袖、肩口に入っています。

訪問着といっても、生地は「御召」、模様といっても「刺し子刺繍」なので、かしこまらない程度のよそ行きによさそうです。

かしこまった席を避ける理由は【訪問着は染めの文様、生地は柔らかものが格上】とされるからです。

わたしは気にしないけれど、気になるひともいるということで…。

でも、こうした抑え気味の一品に出逢えて、とても幸せ(。・ω・。)嬉しい。早く着て、お出かけしたい!

 

そして話はTさんに戻り、あの着物のどこが「御召」だったのかしらん?と。 

シボのある実物の「御召」と比べて、そちらはどう触ってもシボはなく滑らか。

Tさんが間違えるわけもないし…と、「日本の伝統色」色見本を眺めていると、なんとそこに「御召茶色(おめしちゃいろ)」!

茶色というものの、いわゆる茶ではなく、「御召茶色=深い灰みの青系の色」とのこと。

 

なるほど、あのときTさんは、わたしの着物の色を、「おめしちゃ」と、つぶやいていたのでした。

そうとわかるまでに、5年という年月がかかりました💦