COURRiER Japonは世界中の1500超のメディアの中から厳選された記事を翻訳、編集した月刊誌(毎月10日発売)。

カバーする地域や言語も広ければ、話題も幅広い。

写真やデザインも個性的なので眺めてるだけも楽しくなってしまうくらい。

もちろん、読むともっと楽しいけれど。

今回はR+ ( レビュープラス )様から献本いただきました。感謝申し上げます。

ブログ「クーリエ・ジャポンの現場から」メルマガ では本誌に掲載されていないニュースが読めたりするので、こちらも合わせて読むのもお勧めです。


数ある記事の中で私が取り上げたいのは、

注目されなかったが、じつは…2010年を決める「10大ニュース」
10大ニュースの殆どが軍事関係、そしてあまりポジティヴなニュースではないことから2010年も世界平和の実現は難しそう、というのが第一印象でした。
このような10大ニュースが注目されていないというのが不思議なくらい「重大」なニュースは以下の通り。
① 地球温暖化で「北極海航路」が開通
② イラクで新たな民族間紛争の兆し
③ インド・中国間にホットラインが開設
④ 不動産価格上昇で住宅バブル再燃か?
⑤ 失速する米国の「文民増派」戦略
⑥ 中国海軍がブラジルとの関係を強化
⑦ 最新技術でも撲滅できない不正パスポート
⑧ 活動家暗殺に「チェチェン大統領関与」の声
⑨ 米国がウガンダ政府軍の支援を開始
⑩ 米国で進行中の "新世代スパイ育成計画"


一見すると日本にはあまり関係がないように思われるが、そう遠い話題でもないものもあります。

いくつか気になったものをピックアップしてみます。

(番号は上記のニュースの番号に対応しています。)


① 東アジアと西ヨーロッパを結ぶ最短航路「北極海航路」。氷のせいで阻まれてきたその航路が実現したのは地球温暖化の表れであり、生態系の保全の観点からも歓迎すべき事態ではない一方で、海運業者やロシア北東のチュコト自治管区にとってはビジネスチャンスでもある。また北極は天然資源の宝庫でもあり、関係諸国はすでに競争を始めている。このニュースは環境保護と開発の両立の難しさを指摘しているが北極圏の開発は悪いことばかりではないだろう。北極海航路によってアジア~北米大西洋岸間の距離が大幅に短縮され、二酸化炭素排出量の削減につながる可能性がある。また国家間の対立についても、南極大陸において行われたようにルールを作って協力関係を構築する道もある。実際にロシア、米国、カナダ、北欧諸国8カ国が北極協議会(英仏独、中国などがオブザーバー)を設立しており、自国に有利なルールを作るべく交渉している。北極海航路は日本にとってもメリットが大きい航路である。しかし日本は北極協議会に参加しておらず、この問題にあまり積極的に取り組んできてはいない。日本が国策としてどのように北極海航路に関する問題に取り組むか、または回避し続けるのか注視するとともに、国際社会が当該問題の環境的側面と開発的側面とを両立させ、平和的に解決していくことを期待したい。


② イラクに関するニュースが注目されないニュースに分類されることにまず驚いた。確かに最近ではアフガニスタンのニュースの方がよく目につく。しかしイラクの現状は依然として思わしくないようである。問題が解決されないまま国際社会の関心が薄まっていく、その典型をみる思いである。民族対立に国際社会が介入することが常に効果的であるわけではないが、このまま忘れられていくには大きい問題だと思われる。                                  

④ 10大ニュースの中で唯一の経済問題。今なお続く不景気の引き金でもあったサブプライムローン問題が再現される可能性があるというニュースなのだから見逃せない。とはいえ、米国の住宅事情の話であって、個人として日本にいながらではどうにもできないという無力さを感じつつ、さらなる景気の悪化が起きないことを願うばかりである。


⑤ オバマ政権のアフガン政策の一環である「文民増派」が人数不足により実現が危ぶまれているというニュース。武力行使が終わり平和へと移行する中で司法などの分野での支援が必要となることは当然であり、そのような分野にも支援が行き届くことは望ましい。しかしながら、自軍の状況を把握せずに作戦を立てる姿勢には若干不安を感じる。また文民専門家も簡単に育成できるものではなく、アフガンに派遣された彼らの安全の問題も考慮する必要があるだろう。2011年の撤退に向けてアメリカが対処しなければならない問題は山積している(もちろんアメリカのみの問題ではなく必要があれば他の国家や国際社会全体で対処するべきである)。国務長官ヒラリー・クリントンはソフトパワーを強調していたが、まずはどのようなパワーを有しているかを自覚してから、それらをスマートに使いこなす方法を検討するべきである。


⑥ お隣中国の軍事力増強に関するニュースには敏感にならざるを得ない。しかし中国海軍がブラジルとの関係を強化しているというニュースは、日本国内ではあまり目にしなかった。このニュースで感じたことは、中国の外交政策のしたたかさである。中国とブラジル双方の需要と供給がマッチした上、今後他分野へのスピルオーバーの可能性も視野に入っているというのだからあなどれない。中国の軍事的手段の選択肢の拡大は何を見越したものなのだろうか。日本にとってもまた看過できないニュースである。


⑦ 偽造パスポート対策の最先端をいっていると思われるアメリカで、それでも撲滅できない不正があるという。問題となっているのは官僚主義の手続きなのであるが、せっかくの最新技術を無駄にしている。テロリストの中には、事前に訓練を受けたり本部と話し合いに行ったりした渡航記録を消すためにテロ実行前にパスポート紛失の申請をすることもあるらしいので、やはり手続きそのものを厳格化する必要がある。日本でも近年ICチップ入りのパスポートを発行しているが、その効果がずさんな手続きによって無効化されることだけはないよう切に願う。個人としてもパスポート紛失が偽造や密入国に連鎖的に貢献してしまうかもしれないから注意しなければ。

⑨ 米軍がその影響力をウガンダにも広げつつあるというニュースである。これまで勧告のみに徹していた米アフリカ軍の立場を転換させた思惑が気になるところである(2006年に発見された石油の利権?)。目先の利益を優先した無策の支援ではないと良いのだが。少年兵問題に見られるように、紛争で犠牲になるのはいつも弱者であるのだから。


 メディアは注目されるニュースばかりに焦点を当てるものと思っているので、

今回のように注目されていなかった、でも重大なニュースも特集するCOURRiER Japonは本当に魅力的な雑誌だと思います。

 なぜ注目されなかったのか、どうして注目しなかったのかという視点で注目を集めたニュースと比較してみるのも興味深いですし。

 今回の特集では、日本ではあまり身近に感じられないニュースが多く、日本の平和さと国際社会の危うさのギャップが浮き彫りになったように感じました。

 2010年はアンテナを広げるだけでなく精度も高めて、看過するニュースをできるだけ少なくできるよう努めていきたいです。





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