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売れプロ10期生の榎本 雅也です。

 

ESG、SDGsというと、あぁ、またかというな反応をお持ちになるだろうと思う一方で、ここまで認知度を得たことに隔世の感を抱きます。

といいますのも、筆者は2006年から数年間、資産運用でのESG化を推進する役割を所属する会社で担っていたため、当時と現在の温度差が実体験をベースに感じられるからです。

 

1.過去~現在

 

ESG/SDGsの世界は“アルファベット・スープ”と例えられるほど、英単語の略語があふれる世界で、定義も唯一解がなく、様々な思惑も相まって全体像を把握しづらくしている面もあります。ここでは細かい定義はさておき、大きな潮流を整理します。

 

<初期>

社会的責任投資(SRI)フェーズ:宗教的価値観をベースとした投資(アルコール・煙草等を主たる業とする産業への投資を除外など)が限られた層において行われている時期。

 

<導入期>

ESG投資のフェーズ:E(環境)・S(社会)・G(コーポレートガバナンス)からの分析を従来の企業分析に融合(インテグレーション)する投資の考え方が広がっていく時期。

ESGは企業を分析する”レンズ”といえ、企業が解決すべき課題(=事業領域)としてのSDGs(持続可能な開発目標)と区分することができると考えています。ちなみにESGレンズを通して見抜くのは、各企業の遺伝子レベル(今でいう “パーパス”)の強みです。

 

<成熟期>

ESG、SDGsを考慮するのは当然となる時期。現在はこの段階に入ったところでしょう。個人にとどまらず、機関投資家でも関心が高まり、実際に導入されてきています。

しかも、メイン領域であった株式投資から、債券、不動産、未公開株式等の様々な領域に手法が拡大してきています。

実際、ESG関連投資残高は世界合計のみならず、ここ日本においても右肩あがりです(下表参照)。

 

<ESG関連投資(サステナビリティ<持続可能投資>投資)の残高推移>

出所:GSIA、JSIF白書より筆者作成

 

2.変化の兆し~未来へ

 

普及するにつれ、冷静に見る逆向きの力が働くのは世の常ですが、昨今、ESG/SDGs投資に一種の問題提起がなされています。いわゆるグリーンウォッシュ/SDGsウォッシュというものです。きわめて簡略化して言えば、コマーシャルな意味で看板はつけているものの、実態を伴っていないものが紛れ込んでいるのではないか?という視点です。

 

“悪貨は良貨を駆逐する”と言われます。このままでは業界全体が疑念を払しょくできず衰退してしまう懸念があることから、最近では「効果(インパクト)の計測」の「開示」を積極的に進めようという動きが官民一体となって進められてきています。

つまり、投資した結果、どの程度、環境社会にポジティブな成果を上げているかをしっかり測ったうえで、かつ投資家の皆様にしっかり開示しましょう、という方向性です。

 

さらには、昨今(上記のインパクトとは異なる意味での)、“インパクト投資”という新しい概念も昨今出現しています。この概念だけで1つのトピックが成立しますので、軽く触れますが、従来のESG投資との大きな違いはSDGs等に代表されるグローバルな社会的・環境的課題を解決しようという強い意図を持つことを前提としています。

 

3.事業経営へのインパクト

 

上記は全て「投資」の話ではないか?と思われるかもしれません。

 

しかし投資活動は、サプライチェーンならぬ、“インベストメントチェーン”(投資家から投資先企業へと向かう投資資金の流れ)と通して企業・事業と密接につながっています。

また、投資家予備軍である、Z世代(2021年時点で10歳台~20歳まで)の社会的課題解決への意識は非常に高いとされています(2021年日経BPコンサルティングwebアンケート調査より)

こうした強い意志は外部資金調達を行う各企業の財務戦略にじわりと効いてくるものでしょう。

 

それでは公開市場で資本調達をしない企業には関係ないのでしょうか?

 

そう断言することも大きくは以下2つの点でなかなか難しいと考えています。

①未公開株に資金投下するベンチャーキャピタルや負債調達先である銀行等金融機関でもESGを問い始めていること

②非上場企業でも、上場企業からつらなるサプライチェーンの一部を構成すること

 

例えば、昨今、アパレルメーカーや日用品メーカーなど、環境面・人権面で問題のある調達先がないかどうか調査・開示すべきという圧力も高まってきています。

気候変動対策が最たるものですが、自社の取引先の対応状況について綿密に報告が必要となり、未対応では取引が先細る潜在的リスクも考えられます。

 

つまり、企業規模や資本調達の仕方にかかわらず、事業ドメインと自社の競争優位の維持・再構築を計画するにあたっては、上記視点は無視できないものではないでしょうか。私はそのような考えにのもと、診断士としてその橋渡しに貢献できればと考えています。

 

以上お読みいただきありがとうございました。

 

榎本 雅也