いまから11年とちょっと前。それは始まりました。
きっかけは今思えばほんのささいなこと。
以前の母は、明るく前向きで家事も仕事もバリバリこなす、いわゆるステキ主婦でした。
愛読書は『心の基地はおかあさん』。当時流行っていた子育て本です。
そんなできる女ゆえ、かなり身勝手ででしゃばる癖もあったようです。おそらくそのことが病気発症の原因のひとつではないかと私は思います。
私が小学5年のころ、母は地元の小さな会社に経理のパートで働き始めました。
仕事のスキルはかなりのもので、さらに気がきく、ということで社長に気に入られ、気がつけば社長の秘書のような存在になっていました。
これは私の推測ですが、どうも母はあの会社を支えているのは自分だ、と思っていたようです。
それから2、3年たち、それまでよかった会社の業績が一気に悪化。そのことで母は思い悩んでいたようです。家でも落ち込んでいる日が多くなってきました。でもまだ病気、というほどではありませんでした。
そんな日がしばらく続いたある日…詳しい経緯は知りませんが、社長から大声で叱責されたのだそうです。
倒産間近で社長も気が立っていたのでしょう。
その日から、人が変わったようにうつ状態へと入っていきました。
何もする気がしない、母を励まそうとして話しかけても上の空。ただ、布団を被って寝ている日々が続きました。
「うつ病かもしれない…。」
母の妹がうつを患っていたことがあり、病気の発見はスムーズでした。母自身もそう気づいていたようです。
ただ、それが10年以上も続く、曇った日々の始まりだったなんて、誰も思ってもみませんでした。