私のスマホなんか

絶対に見せられない

だけどこの状況は
 

とてもじゃないけど

断れるわけがない


「どうした?」


夫が私を冷たい目で見ている


 どうしよう…

 どうしよう…

 

 

「…いいから早く出せ」


今まで聞いたことのない
 

夫の怒りに満ちた低い声


どうしようもなくなった私は
そのまま泣き出してしまった

だけど
夫の追及は止まらない


「泣いたって無駄だ」

 

 

私は泣きながら
スマホを夫の手に置いた


 お願い…

 どうかアプリに気付かないで…


アプリ以外ではやり取りしていない
僅かな望みだったけど…

あっさりバレた

 

 

「ふ~ん…
 なるほどね…」


メッセージのやり取りを確認している


 終わった…


「結局お前は
 ”自分がしてるから相手も”って感覚か…
 ホント最低だな、お前」

 

 

夫からの辛辣な指摘

だけど
よせばいいのに反論してしまった


「違うの…
 あなたが浮気してるって思ったから…」


「相手がしてたら自分もしていいの?
 頭おかしいんじゃないか」


 ぐうの音も出ない正論…

 でもこれだけは言っておかないと…

 

 

「だから…

 そうじゃなくって…
 ただ恋愛がしたかっただけで…」


すると夫が言葉を遮って


「この内容だと
 最後までしてないみたいだな。
 

 だけどな、
 恋愛がしたかったってことは
 その時点で俺を裏切ってるんだよ。
 

 そんなことさえも
 言われなきゃわからないか?」

 

 

 

 あ…

 

 私が最初に思ってたことだ…



もう逃げ場が無いと悟った私は
完全降伏した


「はい… そうだと思います…」


だけど夫は止まらない


「まったく…
 母親が子供の前で何やってんだよ…」


 え? 子供の前?

 

 

「子供たちが俺に

 ”最近のママは変だ”
 ”スマホばっかり触っている”
 ”なんかニヤニヤしてて気持ち悪い”

 って言ってきたんだよ

 で、いつからか聞いたら
 ちょうどさっき言った
 お前の様子がおかしかった頃から
 始まったみたいなんで、

 まさかな、と思ったらこれだよ…」

 

 

 

 しまった…

 子供たちが見てるなんて
 考えてなかった…



自分の勘違いから始まった

言い訳のしようもない


私は下を向いたまま
夫の顔を見ることも出来なかった

 

 

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遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心

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