彼くんが入店して1か月ほど

 

相変わらず人気者だったけど

彼くんが誰にも応じないことが
お客さんの間でも有名になり

 

だからだろうか

余計に彼くんの人気が高まった

特に男性客からは絶大な人気

 

 

ん~…
なんとなく分かる(笑)

 

 

何でだろうと思って聞いてみた


「ね~ どうしてアフターしないの?」


「いや終電で帰らなきゃいけないし。
 それに俺、内緒だけど高校生だから(笑)」


いやいや 高校生は無理があるだろ

 

そう思いつつも
「内緒だけど」
って言われたことで

 


勝手に「自分は特別」って感じてた

 

 

それにこの頃には
私が自分のことをアピールしまくったせいで

「今日練習だったんじゃないの?」

「大丈夫?疲れてない?」

「あんまり無茶しないでね」

なんて優しい言葉を
掛けてくれるようになった

 


それもあって

 

私の勘違いが暴走し始めた

 

 

 

その日
なぜか私は飲み過ぎて
トイレで吐いていた

そして便器を抱えながら
「私と彼くんはアッチッチだぞ~!」
なんて調子で叫んだりしてた

同室の彼女が「大丈夫?」と声を掛けるけど
酔っぱらいの私には届かず
 

他のお客さんに謝ってくれていた

 


やがて「彼くん」が様子を見に来た

 

 

「あら~出来上がっちゃってますね(笑)」

「本当にごめんなさい!
 ほら!彼くんが心配してきてくれたよ!
 早く出ておいでよ!」

「え~? 彼くん…?
 わ~~~~~~~~~~い!!!
 私と彼くんはアッチッチだぞ~!」

「うわぁ…もう…
 本当に迷惑かけてごめんなさい」

 

すると彼くんが

予想外の言葉を口にした

 

 

 

「いや、迷惑というか…
 まぁ特に否定はしないんだけどね…」

 

 

 

そうつぶやくと
彼くんは司会の仕事に戻っていった

「え? …ウソ?」

彼女は猛烈な勢いで扉を叩いて

「ちょっと!大変だよ!
 大事な話だからすぐ出なさい!!!」

彼女の勢いで私も正気に戻った
興奮した彼女は私に

 


「届いたかもしれないよ!!!」

 

 

彼女から彼くんの言葉を聞いた私は
一気に酔いが醒めた

「え… ホントに彼くんが言ったの?」

「ホントだってば!
 やったね、想いが届いたよ!」

「…信じられない」

あまりのサプライズに
私の頭の中は真っ白

 


思考停止してしまった

 

 

席に戻ると彼くんが

「もう大丈夫?飲み過ぎはダメだよ(笑)」

と優しく声を掛けてくれたけど

私は
彼くんの顔を見ることすらできないほど

 

緊張でカチカチになっていた

 

 


現実とは思えなくて


夢を見ているんじゃないかって思ってた

 

 

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