【戦術分析】チャンピオンズリーグ決勝 ドルトムントvsバイエルンミュンヘン 前半 | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

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2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営

こんにちは。

少し遅くなってしまいましたが、先日のチャンピオンズリーグの決勝のお話です。

この試合はのこりわずか2分という時間帯でバイエルンミュンヘンのロッベンがゴールを決めて2‐1でビッグイヤーを掲げる権利を勝ち取りました。

今日は、この試合の僕なりの分析を述べてみたいと思います。


守備から入ったドルトムント

僕なりのこのゲームのポイントは、ドルトムントがどのようなゲームプランで臨んでくるのかというところでした。

バイエルンはおそらくドイツチャンピオンとして、ドイツのチームと戦うのだから特別な戦い方をする必要は無いというのが力関係から考えられるプランニング。

策を練るべきなのは、チャレンジャーとしてのドルトムントです。

なぜなら、選手のクオリティを比べた時に劣っているのは分かっているからです。

真っ向勝負をしたらイニシアティブを取るのは不可能です。

そこで、クロップ監督が敷いた戦術は高い位置からプレスをかけて奪いショートカウンターを仕掛ける作戦でした。

バイエルンは通常攻撃時にはDFラインから中盤を経由、特にシュバインシュタイガーとハビ・マルティネスにボールを付ける、またはサイドはロッベンとリベリの足元にボールを配球して攻撃を組み立てます。

ドルトムントはこのバイエルンの特徴を逆手にとる作戦を敷きました。

まずは、FWとセカンドFWであるレヴァンドフスキーとロイスの2人がバイエルンのセンターバックへ、左右のサイドMFのグロスクロイツとブラスチコフスキが両サイドバックへプレッシングに行くことで4vs4の数的同数を作りだし、バイエルンに落ち着いて攻撃を組み立てるための時間を与えないようにします。


そしてサイドバックからの縦パスはサイドのMFとサイドバックで警戒、中盤の真ん中でボールを受けるシュバインシュタイガーとハビ・マルティネスにはボランチの2枚が厳しいチェックを重ね前を向かせないことでボールを奪うことに成功し素早いカウンターからバイエルンのゴールを脅かす状況を作っていました。

またこれにより中盤にボールを配球できない時に仕方なく蹴る前線へのロングフィードは精度を欠いたものとなり楽にドルトムントのDF陣がボールを処理することができていました。

前半25分まではこの状況が続きドルトムントが試合を支配していたように思います。

もしも、この時間帯にドルトムントが点を取っていれば、ゲームの様相は変わっていたでしょう。




前線にモビリティを産み出し活路を見いだしたバイエルン


バイエルンのここまでの時間は中盤でボールを引き出してはがしてくれるだろうという前線の選手たちであるマンディキッチ、ロッベン、リベリー、ミュラーの思惑とは裏腹に中盤でのゲームメイクは皆無で、送り届けられる前線へのボールは精度が低かったり高いボールであり足元に届くボールは数少ないものでした。

ハイボールのセカンドボールも運動量の多いドルトムントのダブルボランチに拾われてほぼ思ったようなゲームの展開ができなかったはずです。

そこできっかけを作ったのはリベリとミューラー

リベリはの中央ゾーンに入るポジションを取り中盤で数的有利を作るようにしドルトムントのボランチを混乱させ、さらに味方の左サイドバックが高い位置でプレーできるスペースも同時に作り出す仕事を始めました。

また、ミューラーはスペースを見つけ出す能力に長け、味方が動けば動くほどそれによって生まれる小さなスペースに侵入しパスを受けて中盤での前を向くことができる選手です。

マンデュキッチが背後に抜け出しDFラインとボランチの間に生まれたスペースでボールを受けたり、リベリが中に入ってきた時には今度はミューラーが外に流れたりして相手を撹乱させます。


この様なモビリティが生まれだしてからはドルトムントの守備もマークを掴むのが難しくなり、中盤で足元にボールを受けたら個々のクオリティが高いですからそこから起点を作りロッベンにスルーパスが出たり、中央でもコンビネーションプレーによってバイエルンもチャンスを作り出すようになりました(ロッベンは2度キーパーとの1vs1の状況を迎えた)。

また、ドルトムントからするとDFラインの背後にボールが届くようになるということは組織が下がらなければいけなくなりますから中盤の選手の走る量も増え、セカンドボールを拾うだけの機動力も低下してきたように思います。

これによって、ロングボールを入れたときのこぼれ球もどちらが拾うか変わらないような状態になりゲームはどちらがチャンスを作るかわからない50‐50の支配になったのではないでしょうか。

ゲームの展開としては
A.まずはバイエルンが攻撃をビルドアップする

そしてここからは2つの可能性
①中盤でドルトムントがボールを奪う→ドルトムントのカウンター
②バイエルンが攻略しフィニッシュ

という試合展開に変わったのでした。

このようにして、お互いにチャンスを作ってはキーパーがファインセーブをするという展開が続き前半は0‐0で終えました。

やはりGKがいいプレーをするとゲームは締まります。

素晴らしいプレーに、素晴らしいプレーで返すというのはファンの心を揺さぶりますね。

さて、今回は前半の分析をさせていただきましたが、さすがチャンピンズの決勝だけあり戦術の駆け引きが多彩な試合だったと思います。

一進一退の攻防が続き見ていて面白かったです。

次回は、試合が動いた後半戦です。

後半にも面白い現象が起き勝負に決定的な影響を与えた要素が見えましたので、それをお伝えしようと思います。

それではまた!

#チャンピオンズリーグ

#バイエルンミュンヘン

#ドルトムント