勝利と育成の公式 〜感情を揺さぶるシステム〜 | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

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2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営

サッカー選手を育てるためには勝敗にこだわらないことは正しいことなのでしょうか?

育成と強化のバランスは?

先週バルサBのトレーニングを見させてもらってさらに話を聞かせてもらった監督であるエウゼビオはこの問いに対してこう答えてくれました。

「勝利と育成。この2つのことは切り離して考えるのではなく、同一のものとして捉える必要があります。

我々はスペイン2部リーグで戦っていますが、選手たちはこの競争に身をおくことで1部に上がった時に準備された状態になっているのです。」


競争の中で育つ


これは、僕もスペインサッカーに身を起き感じることの一つです。

リーグのメリットはまさにここにあり試合数を確保できるだけでなく、ディビジョンで整備されたシステムの中で一段一段と選手が階段を上がることができる仕組みになっているのです。

先日の元バルサスクールのディレクターのイヴァンとの会話でもこの話題が出てきて、彼の視点からするとリーグのシステムが日本にはまだ無いと言っています。

「日本にはたくさんのカップ戦があるから試合数は確保されている」

という意見があるかもしれません。

しかし、そのカップ戦のすべての試合は拮抗しているのでしょうか?

1ゴールが試合の勝敗を左右するような試合が何試合存在するのでしょうか?

おそらく読者のみなさんもこのようなカップ戦(○○杯と名のつくトーナメント形式の大会)では10対0の結果となってしまう試合を見てきているでしょうし、僕も日本にいた時はそのような試合を何度も見てきました。



ゴールを決めても喜ばない日本人


イヴァンが面白いことを言っていました。

「このような得点が重要度を持たないゲームではゴールを決めても選手は喜ばない」のです。

確かに(笑)

よく見ますね。

ゴールを決めても当たり前のようにスーと自陣に帰っていくチーム。

感情がないかのように見えてしまう選手のこの行動は拮抗していないゲームのせいなのです。

要するに課題はシステムにあるのですね。

スペインのリーグ戦のほどんどのゲームは1点が入るたびに、選手、スタッフ、観客が大騒ぎです。

僕も自分のチーム試合の時には得点が入れば自然と大喜びします。

なぜなら、その1点で優勝が決まり、残留が決まるんですから。



このスペインのリーグ戦のシステムが僕の感情を揺さぶっているのです。

想像してみてください。

拮抗した試合において、トレーニングで学んだ成果が92分のロスタイムに出て1-0アウェーで勝利するところを。

そしてチームは昇格を果たすのです。

最高の瞬間ではないですか?

勝ちたい!

上のリーグで戦いたい!


だから成長するために取り組み、厳しい環境に身を起きそれによって伸びる。

そして1シーズンを終えた時には、心身ともに上のカテゴリーでプレーする準備ができている状態になるのです。

これが育成=上で戦うための準備の方程式です。

日本もあと5年以内には拮抗したカテゴリーのリーグ戦が上から下まで全て整備されることを期待します。

それは、草の根のプレイ環境を良くすると共に、エリートレベルを引き上げることになるのです。


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