GDPとは

西洋長屋に住む二人は翌日、又管理人の葉可世さんのところを訪ねます。昨日に引き続き、葉可世さんの話を聞こうと言うわけです。

 

八・熊)お早うございます。昨日は有難うございました。何となく経済のことが分かり少し利口になったような気がしています。ところで今日は何の話ですか?

 

葉)やー、お早うお二人さん。今日は昨日の続きでGDPについて話すことにしよう。よろしいかね。

 

熊)なんだか良く分らねえが、私らにわかるように話して下さい。特に八っあんはボーとしているからよろしくお願いします。

 

八)熊さん、余計なお世話だよ。ひとのことより耳の穴をよく掃除をして聞きなよ!

 

葉)お二人とも仲がいいんだね。さて、昨日も言ったように今日はGDPの話をしよう。GDPとは何やら難しそうだが、経済の状態がどうなっているかを現しているのだよ。

 

景気の良い時、GDPは毎年増えてゆくが、景気が停滞している時、GDPは伸び悩み、本当に景気の悪い時はGDPが減ってゆくのさ。日本のGDPは1990年(平成2年)頃から

伸び悩み、傾向としては減り気味なのだよ。

 

おっと、その前にGDPとはどんなものか説明しないといけないね。GDPとは昨日も言ったように、国内総生産(Gross Domestic Product)という英語を表しているのさ。国内総生産というのは一年間、日本で生活している人が、人の生活に役立つ物やサービスをどのくらい生み出したか、これを付加価値というんだよ。少し話が難しくなってきたが、ここまでは分かったかな。

 

八・熊)……(黙って顔を見合わせる)

 

葉)やはり少し難しいかね?大事なところなので繰り返していうと、GDPとは日本に住む人達が一年間にどのくらいの付加価値を生み出したかという事なのさ。昨日も言ったように付加価値として認められるのは誰かがその物やサービスを価値あるものとして認め買ってくれないとだめなのだよ。

八)そうか。うちのかみさんが家の仕事をいい加減にして、パートの仕事に出たがるのはそういう事なんだな!(熊さんも一緒にうなずく)

 

葉)GDPには三つの側面があるんだよ。一つは今言った付加価値でGDPを生産面から見たものなのさ。そして二番目は消費面から見たもので生産したものをその価値を認め、お金を出して買った総額なのさ。三番目は使われたお金は誰かの懐に必ず入り、それが所得になるのさ。我々に最もわかりやすいのがこの三番目の所得を表すGDPだと思うよ。

 

一年間の所得が増えるか減るか。ハムレットではないけれど「それが問題なのだ」ってわけなのさ。

 

熊)そうか!稼ぎが増えるか減るか、それを現すのがGDPなのか。それならおれにも良く分るよ。そういえばここ20年くらい毎年稼ぎが減ってきており、かみさんに嫌味を言われ続けて来たんだ。

 

八)こんちくしょうめ!俺も全く同じだよ。

 

葉)日本では20年以上不景気が続きGDPが増えず停滞していることは分かったかね。世界中景気が悪いから仕方がないという人もいるようだが、それは違うのだよ。日本以外の世界の主要国は例外なくGDPを増やしているのさ。例えばアメリカは20年でおよそ2.5倍にGDPが増えているんだよ。ドイツやイギリスなども数倍にGDPを増やしているんだよ。お隣のシナに至ってはここ10年の間に、約4倍にGDPを増やしているんだよ、4倍だよ!残念ながら日本だけこの間、居眠りをしていたようなものなのさ。

 

八)葉可世さん、それは本当なんですか?日本はいったい何をしていたんですかね。にわかには信じられませんや。

 

熊)それは日本政府のやり方が悪かったってことなのですか?

 

葉)残念ながらその通りなのだよ。但し政府だけの責任とは言えないね。日本は民主主義の国だから、政府も国民の望むような政策を行うことになるのさ。政府は無駄な金を使うな、財政健全化は必要だと言う学者やマスコミの言うことを真に受けた国民の声を政府は無視できなかったのだろうね。

http://stat.ameba.jp/user_images/20160810/21/unk117-117/a9/d1/g/o0551060813720034651.gif?caw=800

 

八・熊)それじゃ俺達国民の自業自得ってことなのかねえ。

葉)そうとばかりは言えないさ。政治家の皆さんも国民が貧乏になると分っていれば、そんな馬鹿な政策を実施するわけはないよ。政治家の皆さんも経済の本当の仕組みを理解していないことに本当の原因があると私は思っているんだよ。学者やマスコミも同罪だよ。いや経済学者が一番罪が重いかもしれないねえ。だって彼らは専門家だろう。いろいろ偉そうなことを言っても現実に20年以上もデフレを脱却できなかったんだから。本当に経済の専門家であるならばデフレ脱却の処方箋を政治家に提示できたはずだろう。そう思はねえか。今の経済学は間違っているんだよ。私はそう思うよ。

 

八)えらい先生が間違ってたんなら、しょうがないか。

 

熊)しょうがないじゃ済まされねえぞ。これまでの損害を補償してくれとは言わないが、一日も早く間違った政策を変更し、少なくともよその国並みの経済成長を取り戻してもらいたいね。そうじゃありませんか、葉可世さん。

 

葉)熊さんいいことを言うね。その通りだと思うよ。では次にこれまで何が間違っていたのか考えて見ることにしよう。今日はこのくらいにして明日続きを話すことにしよう。

 

補足:前頁のグラフに関し

1.     一番上の青い線がアメリカのGDP推移、過去20年で約2.5倍にGDPを増やしている

2.     二番目の赤い線がシナのGDP推移、過去10年で約4倍にGDPを増やしている

3.     三番目の緑の線が日本のGDP推移、過去20年横ばい、本グラフはドル表示であるが

円表示でもこの傾向はほとんど同じ(この期間の為替変動はほとんど影響していない)

4.     下の線はドイツ等のGDP推移、各国とも過去20年で2倍程度GDPを増やしている

5.     このグラフはIMFによるもので2016年現在の予想も述べている。このままいくと2020年にはアメリカは22~23兆ドル(3倍)シナは17兆ドル(7倍)

 

日本のみが過去20年、経済成長がなかったことがこのグラフで明らかである。GDPは付加価値であるが同時に国民の所得であることを考えると、このグラフの持つ意味は誠に重大である。過去20年世界の主要国は国民所得を2~3倍以上にしていたのに、日本だけ20年間国民の所得が増えずピーク時に比べ現在は貧乏になっているのである。

 

日本の政治家・有識者・マスコミはこのようなグラフを見ていないのだろうか?見ても何も感じないのであろうか?非常に不思議である。日本人は忍耐強いというがこれは異常である。国民が覚醒し声を挙げなければならないのではないか。