明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか
福嶋 聡 (著)
dZERO
図書館から借入。2024/2/26 刊。
著者はジュンク堂で店長を務めるなどの経歴を持つ書店員。
ヘイトスピーチやヘイト本といった、
一方的に中国や韓国を批判するスタンスには反対の立場を取る人物である。
しかし、書店としてヘイト本のような自分の主義と合わない書物を販売して良いものだろうか?
そう言った逡巡の末、
著者はヘイト本を店頭に並べることを選ぶ。
自らの主張に反するイデオロギーを排除していては議論にならない。
そこから著者の主張する「書店アリーナ論」が誕生する。
そのような状況を、
ソフトカバーながらも400ページを超えて多方面から論じた実に読み応えのある一冊。
ヘイト本にとどまらず、
それに関与する、歴史修正主義、慰安婦問題、イスラム教と「悪魔の詩」、少年Aの「絶歌」、
沖縄問題、「福田村事件」などなど、
広い分野への考察にも及ぶ。
まあ、個人的にはそこまで風呂敷を広げずに、
書店問題に的を絞って欲しかった気もするが。
それでもやはり、ヘイト本を書店に棚に置くことへの批判は存在する。
それは、言論の自由の封殺ではないのか?
単に、経営上の問題で書物を置いているだけではないのか?
そう言った批判に、著者は反論を進めていく。
ただ広げすぎた風呂敷のせいで、
焦点がボケてしまった気がしてならない。
またこの大書はウェブ上での連載をまとめたもので、
同じ主張が何度も繰り返されるなど、
一冊の本としてのまとまりに欠けた気がした。
読んでいくうちに、
以前読んだ『私は本屋が好きでした』(永江朗 著)を思い出した。
結局その本も、
タイトルとは裏腹にヘイト本に関与する一冊だった。
まあ、こう言った本もあっていいのだが、とは書店のあるべき姿を目指した
書店員としての矜持に絞った内容に期待したのだった。