ユナイテッド・シネマにて鑑賞。
『コンクリート・ユートピア』
オム・テファ監督作品。イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン出演。
謎の大災害が起き、高層アパートの立ち並ぶ広大なエリアの中、
1棟のアパートだけが奇跡的に被害を免れる。
住民たちは一致団結して身を守ろうとするのだが、
他のアパートの住民を排除するに至り、
徐々にエゴが剥き出しになり、
人間同士の諍いが始まっていく。
ざっくり言って、
鑑賞前の印象として同じ韓国映画の『奈落のマイホーム』のような、
娯楽系のディザスター映画かと思った。
もちろんそのような要素もあるのだが、
韓国映画には珍しくギャグがほとんどない、
人間のエゴを描いたシリアスなサスペンス映画だった。
映画のほぼ冒頭から、
大地震(?)による大災害のシーン。
そして、残った1棟のアパートが実質的避難所となる。
この映画は、まさに能登半島大地震を思わせる作品となってしまった。
劇場の案内でも、
「本作では、災害による地盤隆起の描写がございます。ご鑑賞にあたりましてあらかじめご了承いただきます様、
お願い申し上げます」
と注意が添えられている。
被災者がこの作品を観ることはないだろうが、
繊細な精神の持ち主なら、
鑑賞にあたって相当なストレスを感じるかもしれない。
そして、それだけ描写がリアルだったのである。
観ていて楽しい作品ではないのだが、
決して目を逸らすわけにはいかない傑作だと思う。
実質的な主人公は、人の良い若い夫婦。
ファーストネームのイ・ビョンホンは、
たまたま起きた火事の消火活動での勇敢な行動が称賛されて、
臨時の住民代表に任命されてしまう、
実は小心者の男を演じる。
しかし彼には、思いもよらぬ秘密があり、
徐々に狂気をあらわにしていく。
韓国映画の王道からしばらく離れていたイ・ビョンホンだったが、
去年の傑作『非常宣言』に続いて、
実に見事な仕事をしたと思う。
そして、実質的主人公の夫婦も、
ごく普通の人間の心理を代表した存在として、
日常と非常時の橋渡し役を見事に演じたと思う。
特に妻役の女性は、
徹底的に平和主義で献身的なキャラクターであり、
顔立ちも韓国女優にありがちなキツめの美女ではなく、
日本人的な緩めの顔立ちだったのが個人的に気に入った。
ボヨンとした顔立ちだと思ったら、
パク・ボヨンと言う女優さんだったんですね!
終盤が、切ない。
安易なハッピーエンドも困るのだが。
あの奥さんに対して、
「頑張れ!」
と願ってやまないエンディングだった。
8点。