TRY48
中森明夫 著
新潮社
2023/2/1刊。図書館から借入。
あの寺山修司が現代に生きていて、
もしアイドルをプロデュースしたら?
そんな発想で描かれた小説。
一応の主人公は、アイドル志望の女子高生・百合子。
寺山のプロデュースする「TRY48」のオーディションに応募する。
寺山のことなど知らない百合子は、
サブカル女子・サブ子に教えを乞いながら、
オーディションに挑む。
一応はそのように物語は展開するものの、
アイドル志望女子の奮闘記、
と言ったイメージは一挙に吹き飛ぶ。
とにかく、内容のほとんどは中森明夫による寺山修司の虚虚実実とした、
評伝記である。
まあ、生前の描写は実話に即しているのだろうが、
寺山が実際に死んだ1983年以降のエピソードも、
まるで実話のように描かれる。
だいいち、三島由紀夫だって生きて登場するくらいだし。
それだけでは小説にならない。
アイドル「TRY48」のオーディションやその後のパフォーマンスの模様を、
寺山が天井桟敷で実践してきた手法で描く。
その辺りが、本作の小説としての意味をなるところだろうか?
しかし、終盤になりあまりにも展開がシュールに逸脱していく。
これも「寺山らしい」といえばそうなのだが…
それにしてもこの作品。
真の主人公とも言える寺山修司を明らかに批判、
と言うより槍玉に上げている。
主宰した前衛劇団の天井桟敷での振る舞いは、
当時としてはさほど問題にならなかっただろうが、
今では明らかなパワハラ&セクハラである。
若きアイドル「TRY48」との#MeToo的な対立をも絡めてしまう。
中森は何を言いたったのか?
また作中で寺山の口で、中森自身のアイドル論を語らせる。
手前味噌も甚だしい。
くだらない小説だった。
寺山ファンにもアイドルファンにも、
お勧めできない。