三谷幸喜作・演出。

 

テキサス州にある小さな町オデッサ。そこで一人の日本人バックパッカーが殺人の重要参考人として事情聴取されようとしていた。町に住む日本人のトレーナーが急遽通訳に駆り出され、警部を含めた3人だけの取り調べが始まる……。

 

警部は英語、通訳は英語と日本語、重要参考人は日本語(鹿児島弁)。3人で話すシーンは英語と日本語だが、警部と通訳だけのシーンは(英語で会話しているという前提で)日本語になるという仕掛け。英語が離されるシーンでは舞台の背後に字幕が出てくる。

 

いわゆるワンシチュエーションものの正統派の会話劇。2つの言語(と鹿児島弁)が入り乱れる構成は複雑なようだが、驚くほどすっきりとまとまっていた。事件のあらまし、それぞれの思惑、そしてそれぞれの人生が複雑に浮き上がってくる巧みな会話は全く飽きさせず、想定内の結末なのにガッカリ感がまったくない。むしろ、こうあってほしいと思った見事なラストに拍手喝采だった。

 

詳しくは書かないが、英語のアクセントの違いも日本語の声色と言葉づかいで表現する終盤には特に唸った。宮澤エマが「英語監修」となっていたが、英語のセリフはとてもわかりやすくシンプルで、ある程度リスニングができる人であれば字幕を読まなくてもスッと頭に入ってくると思う。とはいえ字幕の出し方にも捻りがあり、それもひとつの演出になっているのがニクい。

 

コミカルで軽いタッチで進めながらも、差別や出自、文化の違いといった背景のテーマに時折グッと潜っていく奥行きのある言葉の数々。『笑の大学』ほどの痛みや高低はないものの、無駄なくギュッとエッセンスを詰め込んだおしゃれな秀作であることは間違いない。役者も全員達者で、非の打ちどころがなかった。おすすめ。