2006 年にブリティッシュコロンビア州へ引っ越して以来、レパードデースは私にとってはずっと「幻の魚」だった。

と言うのも、フレイザーリバーの下流域にいると言うのでホープから下流でかなり探し回ったものの、全く釣れなかった。しかも当時はインターネット上にあるのはイラストだけで、一枚もレパードデースの写真がなく、まるで絶滅魚のようだった。

その後アイダホ州の淡水魚のページにピンボケながら一枚写真が掲載され、ようやく実際にはどんな姿なのかわかったが、依然まだ手にしてはおらず、幻のままだった。

流れが変わったのは昨年のことだった。オンタリオ州からハネムーンでブリティッシュコロンビア州を訪れ、チリワックの近くのB&B (ベッド&ブレックファスト) に泊まっていた人が、B&Bの前を流れるフレイザーリバーでミミズのブッコミをしていたところ、一尾レパードデースを釣ったのだ。

これは私にとっては本当にサプライズだった。ずっと砂礫底にいると思っていたのに、いないと思っていたシルト底がポイントだったのだ。

矢も楯もたまらず同じポイントへ行きたかったが、そこはB&Bの敷地内で、さすがにそのために一泊する気にはなれなかった。そしてその周囲も絶対に私有地でアクセスできないと思っていた。

今年に入り、レパードデースの採集調査報告書がネットで見つかったので、念入りに読んだところ、フレイザーリバーのある地点では、レッドサイドシャイナーに次いで多いとあった。そしてその地点とは、上の一尾釣られたポイントのちょっと下流だった。

グーグルマップで確認したところ、幸運なことに、そこは公共のボートローンチでアクセス可能だった。

夏のソッカイサーモンフィーバーが過ぎ去るのを待ち、そろそろいいだろうと思って今日、行ってみた。案の定ソッカイのソの字もなくなっていて見渡す限りアングラーは一人もいなかった。

仕掛けはオイカワ用のフカセ仕掛けのウキを取って板オモリを増やしたいわゆるドボン仕掛けで、ハリは秋田キツネ3号ハリス 0.4 号。これをシマノのホリデー小継 5.4 メートルに結び、エサはデューワーム (ワームサイズのドバミミズ) の先端をサシサイズにカットして使った。

遠浅だったのでウェーディングし、少し沖にあるちょっと深くなっているように見えるポイントに投入。ラインを張ってアタリを待っていると、すぐに穂先が引き込まれた。だが釣れたのはピーマウスだった。

その後同じポイントから2尾目のピーマウスとレッドサイドシャイナーが釣れた後、小さくて細くて褐色味がかった魚が釣れて来た。思わず「これか!」と叫んでいた。そして久しぶりの「やったー!」が出た。

釣れるまで何回も通うつもりでいたが、意外にあっさりと釣れてくれた。幻だと思っていたが、実際はかなりの数がいるようだ。


とうとう釣った「幻の」レパードデース。いるところにはいるものだ。



初レパードデース別影。ひれがどれも長いのが特徴。



初レパードデースの俯瞰。確かにヒョウ柄のようだ。




レパードデースを釣ったらぜひ確かめたかったのが、腹びれのステーと呼ばれる根元の構造。だがイラスト(下、出典:ロイヤルブリティッシュコロンビアミュージアム)とは違って肉眼でははっきり見えず、画像処理してようやく下掲のようになっているのがなんとかわかった。



ステーとは肉質の膜でボディと腹びれの内側の軟条をつないでいるものとのこと。もっとしっかりしたものかと思っていた。



口には目立たないが一対のヒゲがあるのがわかる



初レパードデースの腹側



レパードデースのハビタット


結局この後も釣り続けたがニ尾目のレパードデースは釣れず、正味一時間強でピーマウス6尾、ノーザンパイクミノー3尾、レッドサイドシャイナー1尾に対してレパードデース1尾という確率だった。

コイ目コイ科 Rhinichthys 属。ロングノーズデースブラックノーズデーススペックルドデースと同属。その名の通り体表にはヒョウ柄が広がっている。最大全長 12 センチ。フレイザーリバー水系とコロンビアリバー水系のみに分布。大河川や支流のストリームの底に棲むが、湖の水尻近くの岸辺に見られることもある。近縁種のロングノーズデースよりも遅い流れを好む。無脊椎動物食性。


この日釣れたパイクミノー。まさかパイクミノーの前にレパードデースが釣れるとは思ってもみなかった。



この日釣れたピーマウス



この日釣れたレッドサイドシャイナー