オンタリオ州の秋はメープルの紅葉がとても美しい季節だ。そしてオンタリオ湖からサーモンが産卵のために支流へ遡上する季節でもある。2004 年の秋に釣友のケンにサーモンを釣ったことがないと話すと、世話好きな彼は釣友で高校生のマットや、幼なじみのマイクとその従兄弟ら二人を誘ってサーモン釣りイベントを開いてくれた。場所はオンタリオ湖の支流のブロンティクリークというところだった。遡上していたのはほぼ全てがシヌックサーモン (キングサーモン) だった。

釣り方はエサのブッコミ釣りで、クリークの駐車場でマットが私にエッグバッグと呼ばれるイクラを使ったエサの作り方を教えてくれた。使ったタックルはミディアムアクションのスピニングタックルに、8ポンドライン。これに極小スイベルを介して6ポンドリーダー約 40 センチとマスタッドの伊勢尼型8号ひねりバリを結んだ。そしてガン玉をハリ上7センチくらいの位置にかませた。

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ブロンティクリークでのサーモン釣り風景


エサ釣りと言ってもサケは遡上を始めるとエサを食べなくなるので、この場合はサケが他の個体の遺伝子を減らして自分の遺伝子を増やそうとする本能を利用したものだ。そして狙い通り、サケの通り道にぶっ込んでいたらすぐにヒットした。さすがにキングサーモンだけあってファイトは素晴らしく、人ごみから離れて釣っていたのだが、その人ごみの方へ何度も魚が突っ込んで行ってしまい、あやうくオマツリになりそうになったりした。胃の痛くなる息詰まるファイトだったが、最後は浅場に誘導してケンが素手で尾柄をつかんで取り込んでくれた。93 センチのメスだった。ケンに持ってもらって撮影した。

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初めて釣ったシヌックサーモン


こうして私のサーモン初釣行は無事に終わったが、その後は一度もサーモンを釣りに行くことはなかった。理由はその混雑ぶりと、ミートハンターと揶揄される、サケの肉やイクラ目当てだけのマナーの悪い釣り人の存在のせいだった。小さなプールにたまっているサーモン目掛けて寄ってたかって釣り人が押し寄せるので、まさに肩と肩が触れ合う混み具合で、ケンには悪いが釣り堀で釣っているような感じだった。再びシヌックサーモンと出会うのは2年後にブリティッシュコロンビア州のハリソンリバーでということになる。

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ブリティッシュコロンビア州ハリソンリバーで 2006 年 10 月に釣ったシヌックサーモン


ハリソンリバーへはボートが必要なので、普通はその本流である大河フレイザーリバーで釣っている。釣りシーズンは8月中旬から9月一杯まで。だが大河ゆえに、魚とターミナルタックルが出会う確率が低いという面もある。丸一日やってボウズもよくあるという、私にとっては難しい釣りのひとつだ。

いろいろな釣法を試してみたが、結局スプーンを使ったボトムバウンシングに落ち着いている。3/4 から1オンス程度の重いスプーンを使い、斜め上流にキャストして流れに任せ、底に着いた瞬間にロッドを軽くあおって底から少し離すことを繰り返しながら下流へと流していく。流れきるまではリトリーブは行わない。このやり方は 2007 年に、州の北部を流れる大河であるスキーナリバーへ行った時に見かけた方法だった。やはり旅はするものである。

サケ目サケ科タイヘイヨウサケ属。太平洋サケ群に分類されるサーモンなので、もともとは北米では太平洋側のみに生息していたが、漁業資源として五大湖に移植されてすべての湖で定着した。最大全長 160 センチ、最大重量は 60 キロを超す。

ブリティッシュコロンビア州では、河川に入り遡上を始めてから体色が婚姻色の茶褐色に変化していくが、オンタリオ湖のものは支流が短いため、支流の河口で待機している時には既に婚姻色が出ている。このため支流で釣ったものは例外なく茶色いので、オールドブーツを釣っているとブリティッシュコロンビア州のアングラーからは馬鹿にされている。


2015年6月にアメリカはワシントン州のコロンビアリバーでキヂで釣れた、シヌックサーモンの放流魚のスモルト


ブリティッシュコロンビア州でのシヌックサーモン釣り風景