三田誠『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿1 「case.剥離城アドラ」』 | 活字に溺れて

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こんばんは、夏乃です。
こうも雨降りが続くと外に出るのも億劫で、家に籠もって素敵な物語の世界に身を投じたくなりますね。

今回は私がミステリーと魔術の素敵な融合が味わえた、と感じた作品を紹介したいと思います。

✱ ✱ ✱ ✱

三田誠『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿1 「case.剥離城アドラ」』

あらすじ:
舞台は英国ロンドン。

魔術協会の総本山である「時計塔」で君主(ロード)と呼ばれる地位にあるエルメロイⅡ世は義妹から"剥離城アドラ"の遺産相続に立ち会って欲しいと依頼を受ける。

内弟子グレイと共に向かったそこは至る所が天使に埋め尽くされた一種異様な城であった。
Ⅱ世らと同様に招かれたのは高位の魔術師たちであり、彼らはそれぞれ「天使名」というものを与えられる。

そこで告げられた今は亡き城主の遺言は
「天使の名を問う」
「問われて答えられなかったものは、すべからく天使を剥ぎ取られる」
「私の天使をつかまえたものを、遺産の相続者とする」
という3つであり、この謎を解いた者が遺産相続の権利を得るということであった。

魔術師たちはそれぞれの魔術を用い、謎を解明しようとするが…

感想:

タイトルからも分かるかと思いますがただの魔法モノではありません。ミステリーです。死人が出ます。

この作品はゲーム、アニメ等でも有名なFateシリーズのスピンオフのノベライズ作品です。
Fate/stay nightから始まるFateシリーズは万能の願望器─聖杯─を巡る聖杯戦争を描いた伝奇物語で、今もゲーム、アニメ等さまざまな作品が出ており、今回はそのシリーズの中でもFate/Zeroにおける登場人物のその後を描いた作品です。

以下は読む方によってはZeroのストーリーの結末に触れたと感じてしまう部分があるかもしれません。
ご注意ください。


✱ ✱ ✱ ✱

第四次聖杯戦争における唯一の生き残り(というと少し語弊があるかもしれませんが)であるマックス・ウェイバーがこんな形で再登場してくれるとはZeroを見た時の私は考えもしませんでした。

何の才能もない主人公が成長してどんどん強くなる、というのはよくある物語ですが、彼はそうではありませんでした。

あの当時無力な少年であったウェイバーは、ロードという高位を得ても、やはり魔術師としては三流で、そんな自分の力のなさに歯がゆさを感じたり天才たちに嫉妬したりしています。

その姿はまるで届かない夜空の星に手を伸ばそうとしているようで、魔術師である以前に彼も一人の人間なのだと思うとなんだかとても愛おしく思ってしまいました。

Zeroの中では特にウェイバーが好きだった私としては時折見せる少年時代の面影に親のような感情が湧いてきてしまうのでした。
 
✱ ✱ ✱ ✱

魔術とミステリーというのは一つの作品にまとめるのは難しいものだと思います。
色々な制約があってこそのミステリーに魔術というものがあれば何でもありになってしまうからです。

しかしこの作品は一味違いました。
フーダニットでもハウダニットでもなくホワイダニットに重点を置いているのです。

誰がどうやって犯行を行ったのか、そんなものは魔法があればどうとでもなってしまいます。しかし何故やったのか、そこだけは魔法の力ではどうにもなりません。

そんな風に、ミステリーとしての面白さもきちんと描かれているのがとても魅力的でした。

作者、三田誠氏の著書に『レンタルマギカ』という作品があるのですがこれがとても面白い。魔法系ライトノベルの中で私のベスト1,2を争うほど。

実は私が今回この小説を読もうと思ったのも三田氏が原作者だというのが理由の一つでした。

巻数は少し多いですが完結している作品なので、もし興味があれば読んでみてください。

少し脱線してしまいましたが、この『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』は主人公以外の登場人物たちもとても魅力的です。

内弟子のグレイ。
いつもフードを被っている不思議な少女で出生に少し謎があるらしい彼女のこれからがとても気になります。

義妹ライネス。
エルメロイ家次期当主で、可愛らしい見た目に反して性格が悪いのにも関わらずどこか憎めません。

まだ一巻ということもあり主要な人物はまだまだ少ないですが、これから巻を重ねるにつれて魅力的なキャラクターたちが出てくるのだろうと思うとわくわくが止まりませんね。

現在テレビアニメが放送されているのでアニメと小説の両方で楽しみたいと思います。

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実はFateシリーズの大ファンなので、今回の投稿は読書の話というのとは少し違ったような気がしなくもありません。

原作のstay nightから熱く語り始めようとする自分を抑えるのに必死でした(笑)

次回はもう少し大人しく丁寧に感想を綴りたいですね。

それではまた素敵な物語を探したいと思います。
おやすみなさい。