⒐
⑴
直之と展代の息子ヒロシに成り済ましている、詐欺師の新名、
うどん屋アルバイトとして働き出した詐欺師・健太が
うどん鉢と額縁を持ち帰ってくる。
健太「ただいま戻りました」
健太「写真、現像して拡大してもらってきましたよ」
健太が額縁の写真を客席に見えるようにすると、
展代と直之のモノクロ写真が現れ、
新名「遺影になってるやん!」
新名「なんで俺写ってないんや?」
健太「兄貴が写っていたらまずいでしょ?」
健太「だから、兄貴は除けておきました」
新名「ああ、そうか! 健太、やるやないか」
展代が「店に写真を飾りましょ!」とは言っていたが、
新名は何故か遺影風巨大写真を客用テーブルのど真ん中に立てて
※
補足
『ある人物が遺影風写真を見て勘違いする』
後に起こる展開のために、
①弟分・健太が遺影風写真を作り、
②兄貴分・新名が(うどんを食べるための)客用テーブルのど真ん中に遺影風写真を飾る
一連の行動が極めて不自然な場面になっています。
この場面だけは登場人物に自分の意思が無く、
作者の都合で強引に動かされているように映りました。
⑵
頭部の毛量が少なめの男性(もりすけ)が店にやってくる。
男性「すいません」
新名「お客さん?」
男性「客じゃないんです」
男性「オトンとオカンはどこに…」
新名「ひょっとして…!」
男性「息子のヒロシです」
健太がヒロシに聞こえないように、小声で新名に対し、
健太「不味いですよ!」
新名「(俺と)全然似てない!」
本物のヒロシは子供の頃は新名のような顔立ち・髪型だったのだろうか?
⑶
健太がヒロシの二の腕のホクロを確認する。
巨大なホクロが現れると感動し、ヒロシに握手を求める、健太。
健太「本物に会えて光栄です!」
ヒロ「本物?」
新名「あ、いえ…」
新名「どうして、戻ってきたんですか?」
ヒロ「この店を継ぐのが嫌で家を出て、」
ヒロ「東京で起業して成功しましてね」
ヒロ「結婚して子供もできたので、親に会わせようと」
新名「何で戻ってくんねん!、ハゲッ!」
ヒロ「今、ハゲって言いました!?」
新名「あっ、いや、ハエです」
新名がハエを払うフリをする。
ヒロシに成り済ましている新名にとって、
本物のヒロシはハエのように追い払いたい鬱陶しい存在だろう。
勝手に家を出て行って、勝手なタイミングで戻ってきた、ヒロシ。
親の心子知らずで、昔も今も自分勝手に行動し続けている様子。
⑷
ヒロシの目に(客用テーブルに立て飾られた)遺影風写真が飛び込んでくる。
ヒロ「遺影!?」
ヒロ「えっ、オトンとオカン死んだんですか?」
新名「そっ、そうなんです! 亡くなりはった」
ヒロ「えーっ!」
健太「えーっ!」
新名が健太に対し、
新名「なんでお前が驚いてんねん!」
新名がヒロシに対し、
新名「そういうことなんで、お引き取りください!」
ヒロ「帰れませんて!」
健太は独り言のように、
健太「展代さん、『魂取られる』とか言ってたけど、」
健太「僕が撮らなきゃよかった…」
新名「後で説明する!」
⑸
新名がヒロシに対し、
新名「帰ってください!」
ヒロ「帰れませんよ!」
と、その時、厨房から直之の絶叫が響く。
直之『助けてくれーっ!!』
ヒロ「えっ?」
新名「悪霊の雄叫びや!」
直之が『新名』に対し、
直之「ヒロシー!」
うどん粉で顔を真っ白にした直之が厨房から現れる。
ヒロ「わーっ!、オトンのオバケーっ!!」
本物のヒロシ目線では顔面蒼白の幽霊に見えている様子。
新名「悪霊退散っ!」
新名は両手を合わせ人差し指を突き出し、霊媒師の除霊のフリをする。
⑹
今度は展代が額にはんぺん△を付けて現れる。
展代「えらいことやー!」
ヒロ「わーっ!、オカンのオバケーっ!!」
本物のヒロシ目線では、展代は白頭巾をつけた幽霊に見えている様子。
新名「悪霊退散っ!」
新名は両手を合わせ人差し指を突き出し、霊媒師の除霊のフリをする。
ヒロシが新名に確認する。
ヒロ「もしかして霊媒師のかたですか!?」
新名「そうです!」
新名「ここに居たらもっとハゲますよ!」
ヒロ「えっ、えっ、えっ!、わーっ!!」
ヒロシにとっては何よりも怖い言葉で、慌てて逃げ去っていった。
⑺
直之「謝って、うどん粉を被ってしもうた…」
展代「はんぺん、どこいったんやろ!?」
新名「額に付いてる」
展代が額に付いたはんぺんを手にし、
展代「ほんまや」
展代「さっきの人、誰?」
直之「オトン、オカンって言うてたけど…」
新名「警察官が言うてた詐欺師かも…」
直之「気ーつけなあかんな」
直之「夕食の準備をしに行ってくるわ」
展代「うどんの仕込みしてくるわ」
二人が厨房に向かう。
新名「(すること)逆なってるよ!?(苦笑)」
詐欺師が近くにいることを実感し、動揺しているのかもしれない。
⑻
新名と健太、二人になる。
新名「実の息子が帰ってきた! 作戦、急がな!」
新名「借金取り役に連絡してくれ!」
健太がスマホで電話をする。
健太「、…」
一瞬だけ表情を変えてから、
健太「、全然出ない」
新名「一瞬、(電話が)繋がった感じ出てたやん!」
健太がスマホを仕舞う。
新名「どうすんねん!」
健太「こうなったら、僕が変装して借金取り役をします!」
新名「頼んだ! 顔隠して、ヤバい感じで来てくれ!」
健太「分かりました!」
健太は借金取りに変装するため外出していった。
その9に続く