⒎
⑴
花月うどん店の女将・展代
直之と展代の息子ヒロシに成り済ましている、詐欺師の新名
2名。
展代が息子の好きなおでんを食べさせようと張り切り、
はんぺんの量を尋ねていると、
赤いドレスを来て綺麗にメイクをした女性・由梨香(
いが「失礼します」
展代「嘘でしょ!?」
展代「病院に居てはると…」
いが「…?」
展代「完全に復活しはった?」
展代「入院してた時は日本中が心配してた」
いが「…? 誰と勘違いしてます?」
展代「アントニオ猪木さんですよね?」
すると、由梨香は顎を強調して、アントニオ猪木を真似、
いが「元気ですかっ!」
今度は客席前方の一人の観客を怖い顔で凝視して、
いが「元気ですかっ!」
由梨香は再び客席全体を意識して、
いが「元気があっても何にもできないっ!」
いが「何でですかっ!」
いが「…、お金が無いから!」
いが「お金が無いと何にもできないっ!」
新名「猪木さん、そんなこと言わない。(半笑)」
いが「言われたから、つい乗っちゃいました」
展代「ノリのいいかたですね」
⑵
由梨香はキャバクラ・フラワームーンのホステスらしい。
いが「直くん、いる?」
仕込みをしていた直之が厨房から出てくる。
直之「ヒロシ、手伝ってくれるか?」
直之が由梨香に気づき、慌てて由梨香のもとにいき、ヒソヒソと、
直之「ここには来るなって言うたやろ?」
いが「ツケの3万、払ってくれないから」
展代に丸聞こえのようで、
展代「もしかして入れ込んでる? このシャクレに。大シャクレに」
いが「シャクレてないわよ!」
由梨香がバッグから手鏡を取り出し、自分の顎を確認する。
いが「シャクレてないわよ」
手鏡を見ながら、次第に顎を強調した変顔になり、
いが「えっ?、シャクレてる?」
いが「シャクレてない?」
変顔から目を見開いた狂気的な顔に変わる、由梨香。
いが「シャクレてる!?(狂)」
いが「シャクレてない!?(狂)」
いが「シャクレてるの!?、ねえ!(狂)」
現実を受け入れられず、白目気味になる、由梨香。
いが「今、どこにいるの!? ここはどこ!? 私は誰!?(狂)」
展代「怖い」
展代「どこ見て、誰に言うてんの?(苦笑)」
由梨香が落ち着きを取り戻す。
いが「シャクレてるって言われて、おかしくなっちゃったわ」
⑶
由梨香が直之に対し、
いが「ツケの3万、今すぐ支払って」
直之「分かった」
直之がレジから3万円を取り出す。
展代「待って!、店の金やないの!」
直之「一緒やないか」
店の金でツケを返そうとする直之を展代が止めようとして、
胸とそれ以外の部分(頬・肩等)を触ってしまい、
直之「ピュッ」
直之「ポッ」
直之「ペッ」
等、触られた場所によってピュッを変える。
しかし、笑いとしては大きく広がらず、
直之「どうすんねん!」
⑷
新名が独り言として、
新名「(警察に捕まる前に)早よ、作戦実行せな!」
新名が展代と直之に対し、
新名「喧嘩はやめて!」
新名「もう、俺が払うわ!」
新名が由梨香のもとに行き、財布から3万円を取り出し、
いが「ありがとうございます」
⑸
いが「では、失礼させてもらうわ」
いが「直君、またお店に来てね」
由梨香が去っていく。
由梨香は下手端で立ち止まり、手を広げ、
指の山で「シャクレてる」、谷で「シャクレてない」を数え出す。
最終結果は明白で、
新名「あかんよ?(苦笑)」
と数えることをやめるよう忠告するが、由梨香は数え続け、
最後の指の山で
いが「シャクレてる!!」
いが「、イヤーッ!!(狂)」
由梨香が半狂乱状態で去っていた。
舞台を盛り上げた由梨香に客席から大きな拍手が起こる
新名「やばい奴や」
展代「あんなんに入れ込むやなんて、恥ずかしいわ」
由梨香はこの場面のみの出演だが、一際強烈な印象を残していった。
⒏
⑴
花月うどん店の女将・展代
大将で展代の夫・直之
直之と展代の息子ヒロシに成り済ましている、詐欺師の新名
3名。
由梨香と入れ替わりで、
派手な黒スーツで赤シャツを覗かせる男性・政唯(松元政唯)
政唯はサングラスをしていて、髭が非常に濃く、
新名が笑い出す。
新名「えげつない奴が来た」
新名「顔、真っ黒!(苦笑)」
新名「お客さん?」
松元「客じゃない。ノブちゃんに用があって来た」
展代が慌てて政唯に近づき、小声で、
展代「ここには来ないでって言ったでしょ?」
いが「ノブちゃんがツケの10万を払ってくれないから」
⑵
直之「気持ち悪い! 誰や?」
松元「僕はホストクラブ・ダンディのNo.1ホスト、政唯だ」
新名「これがNo.1? ヒゲのNo.1でしょ?」
松元「指名No.1だ」
新名「嘘やろ?」
松元「今のは聞き捨てならないね!」
政唯がサングラスを外すと、キャーと黄色い声のSEが流れる。
スーツの右内側を開いて見せると、
また黄色い声「キャーッ」のSEが流れる。
最後に決めポーズをすると、悲鳴の「キャー」のSEが流れる。
3段落ちのこの場面だが、
出だしに映画『シャイニング』
最後の悲鳴のSEが効果的に映らない。
新名「どういうこと?」
松元「間違えた…」
政唯がスマホを取り出しタップする。
新名「自分で音出してたん!?」
⑶
直之がホステス由梨香に入れ込んでいることを貶した展代だが、
展代は展代でホスト政唯に入れ込んでいた。
松元「ノブちゃん、10万きっちり払ってもらおうか」
松元が椅子を蹴ると「ピョン」
政唯が行動するたびコミカルな効果音が流れ、観客の笑いを誘う。
また、コミカルな効果音は公演によって異なっていって、
効果音が変更されたか、元々即興で入れられている様子。
展代「10万も持ってる人なんて、一人しかいない…」
新名を期待の目でチラ見する、展代。
早期の詐欺の作戦を実行したい新名は
新名「払ったらええんやろ!」
財布から10万円を取り出し、政唯に渡す。
新名「すっからかんや!」
政唯「これで失礼するよ」
政唯「ノブちゃん、また来てね」
政唯は足を床につけるたび、『プー』
⑷
直之「あんなブサイクに入れ込むやなんて」
展代「あんたこそ、あんなブスに入れ込むやなんて」
直之「店でブスに会うから、展代が綺麗に見えるんや」
展代「私かて、店でブサイクに会うから、
直之「展代…⇒」
展代「あんた…」
展代が客席に後頭部を見せる(=
展代と直之が濃厚なキスをする。
新名「やめろ! 店で何おっ始めてんねん!」
展代が新名に対し、『女』の声で、
展代「弟ができてもよろしい…?」
新名「要らん!(苦笑) 離れろ!」
⑸
展代が新名に感謝する。
展代「ヒロシ、払ってくれて、ありがとう」
展代「うちの自慢の息子や」
展代「帰ってきてくれて、ほんま嬉しい」
直之「お前がピンチの時は助けてやるからな」
新名「ほんまかいな?」
展代「当たり前やないの」
直之はうどんの仕込みに、
新名、一人になる。
その8に続く