(第二景)

翌日。

 

詐欺師の新名と健太が花月うどん店の法被を着ている。

健太「兄貴、昨日はバレずに息子に成り切れましたね」

新名「よう行けたな」

新名「息子、あんなアザあるんや」

 

新名「お前も店のアルバイトになれて、一安心やなニヤリ

二人は早速働いている様子。

 

新名たちが店の権利書を奪い取る作戦を再確認する。

新名「借金取りが来て、俺に借金があることにする」

新名「借金の肩代わり名目で、土地の権利書を奪うニヤリ

 

新名「借金取り役は手配できてるんやろうな?」

健太「ばっちりです。連絡付いてますニコニコ

 

大将・直之と女将・展代が買い出しから戻ってくる。

 

直之は小さな紙袋をアピールし、

直之「ただいま。うどん粉買うてきたニコニコ

(うどん屋が、片手で持てる量の粉? 何玉分?)

 

展代はビニール袋をアピールし、

展代「今夜はヒロシの大好物のおでんを作るからね照れ

展代「はんぺん、ようけ買うてきたさかいに照れ

 

直之「家族揃っての夕飯もええもんやな照れ

 

展代「そや。久しぶりに家族が揃うたことやし、一緒に写真を撮りましょ」

新名「写真はええわタラー

展代「ヒロシ、あんた、昔の人みたいに写真撮ったら魂抜かれる思てんか?ウインク

展代なりの冗談を飛ばす。

 

後々のことを考え、証拠を残したくない、新名。

 

展代の押しが強く、写真を撮らざるを得なくなる。

 

健太「写真やったら、僕が撮りますウインク

 

上手側に展代・新名・直之の順で並び、

下手入り口付近で健太がスマホを構える。

 

健太「はい、チーズ!」

と同時に、新名がしゃがみ、靴紐を結ぶ。 笑い泣き

 

展代「ヒロシ、なんしてんの?」

新名「靴紐が解けてたからアセアセ

展代「あんたの靴、靴紐無いやつやないのタラー」 笑い泣き

新名「ごめん、勘違いやったアセアセ

 

撮り直し。

 

健太「はい、チーズ!」

と同時に、新名が手のひらで自分の目を隠す。 笑い泣き

 

展代「ヒロシ、なんしてんの?」

新名「あっ、これ、今、女子高生の間で流行ってるポーズアセアセ

展代「あんた女子高生ちゃうでしょ? 男でしょ?タラー

 

撮り直し。

 

健太「はい、チーズ!」

と同時に、新名が直之に甘えるように顔を直之の腹に埋め、

上げていく独特のイントネーションで、

新名「お父ちゃ〜ん右上矢印(涙)」 笑い泣き

 

展代「ヒロシ、なんしてんの?」

新名「久しぶりに再会したから…」

 

新名「お父ちゃん、お母ちゃんの横に並び?ニコニコ

新名「俺は端っこでええから」

展代が横にいると不審な行動を気付かれ、撮り直しになるため、

自然な会話で間に直之を入れる。

 

展代・直之・新名の順で並び、撮り直し。

 

健太「はい、チーズ!」

と同時に、新名は顎を引き、ピースサインを前に出し、極力顔を隠す。

 

展代は写真撮影に満足した様子。

 

展代「お母ちゃん、幸せや照れ

展代「折角やから、写真を店に飾りましょ!」

 

健太「それやったら、鉢下げのついでに写真を現像拡大してきますニコニコ

展代「お願いできる?」

健太が外出していった。

 

新名が独り言で、

新名「あいつ(=健太)、真面目に働くなあ」 笑い泣き

 

 

花月うどん店の女将・展代

大将で展代の夫・直之

直之と展代の息子ヒロシに成り済ましている、詐欺師の新名

3名。

 

クリーニング店の蒲島・まみ夫婦がうどん鉢を返しに来る。

カバ「今日はコシがあったニコニコ

展代「ヒロシが手伝ってくれたから。美味しかったでしょ?」

まみ「確かに…えー

 

展代「なんや、捻くれもん!プンプン

まみ「なんや、カッパみたいな顔してプンプン

展代「あんたこそ、お尻大き過ぎて、豆タンクみたいやわ!プンプン

展代の言葉に合わせ、まみが客席にお尻を向ける。

だが、そこまで特徴的な大きさは感じられず、客席の反応は薄め。

 

まみ「カッパ!ムキー

展代「豆タンク!ムキー

犬猿の仲の二人が小学生の口喧嘩を始める。

 

直之「やめなさいタラー

直之が二人の間に割って入ろうとすると、展代が直之を払い除ける。

その際、展代の手が直之の胸に当たり、

直之「ピュッ」

 

上記の流れを3度繰り返し、

直之「ピュッピュルッピュドン!」

客席から拍手が起こる。

 

次の瞬間、二人は直之のギャグを無視して、

まみ「カッパ!ムキー」 笑い泣き

展代「豆タンク!ムキー

 

直之「なんでやねーん!アセアセ

直之「渾身のギャグを無視すな!えー」 笑い泣き

 

展代「拍手あったんやから、ええやないですか。(苦笑)」 笑い泣き

直之「ギリや!えー」 笑い泣き笑い泣き

ギリギリとも義理とも取れる発言。

いずれにしても、お決まりの拍手に過ぎないと捉えている様子。

 

蒲島の息子・亜由貴がクリーニング店から出てくる。

 

亜由貴が蒲島に尋ねる。

亜由「洗剤が切れたんやけど、場所を教えてくれる?」

 

展代「ヒロシ、亜由貴君やニコニコ

新名「亜由貴?キョロキョロ

展代「クリーニング店の息子さんや。子どもの頃よう遊んだでしょ?」

 

亜由貴の方も新名の顔がピンと来ない様子。

カバ「うどん屋のヒロシ君や。昔、よう遊んでもろうたやろ?」

亜由「ああニコニコアセアセ

 

亜由「お久しぶりですニコニコアセアセ

亜由貴が新名に余所余所しく挨拶する。

展代も直之も蒲島も詐欺師・新名をヒロシと信じ込んでいるが、

20年ぶりの再会で、亜由貴はヒロシの印象が薄れているのかもしれない。

 

新名も余所余所しい感じで返す。

新名「お久しぶりですニコニコアセアセ

 

展代「なんやの、二人とも余所余所しい。幼馴染やのに」

新名「20年ぶりに会うたら、そんなもんやニコニコアセアセ

「自分は詐欺師で亜由貴を知らない」とは言えない、新名。

 

亜由貴が蒲島に尋ねる。

亜由「洗剤どこ?」

蒲島「あのー、突き当たりを右に曲がった先にあるイオンの2階に置いてる」

亜由「買いにいかなあかんのか!」 笑い泣き

 

亜由「行ってくる」

亜由貴が洗剤を買いに出かけた。

 

 

その6に続く