(第三景)
⒐
⑴
翌朝、チェックアウト時刻。
誰もいないロビーに、
中央奥通路から盗人の裕と敦史が黒ボストンバッグを持ち現れる。
吉田「あれから現場検証があって、
吉田「今のうちに交換しよう」
黒ボストンバッグから偽物の壺を取り出し、あっさりと入れ替え、
西郷の壺をボストンバッグに仕舞う。
吉田「めっちゃ簡単にできたやん!」
吉田「夜の(=二景)、なんやったんや?」
黒ボストンバッグをテーブル付近に置く。
⑵
刑事の椎森と岩崎もチェックアウトしようと
黒ボストンバッグを持って現れる。
椎森が裕たちに挨拶する。
椎森「おはようございます」
すると、敦史が椎森に激怒し、
奥重「よくも女将さんのパンティを被ったな!」
吉田「この人ちゃう! (玉置と頭部が)似てるけど!」
椎森は少し気になっていたことがあるようで、裕に確認する。
椎森「そう言えば、昨夜はここで何をしていたんですか?」
吉田「えっ?、あの、自販機を探してました」
椎森「そうでしたか」
⑶
椎森が黒ボストンバッグをテーブル付近に置く。
岩崎「電車の時間が迫ってるんで、
椎森「そうしよか」
岩崎が奥に呼び掛けると、女将の友見が現れる。
椎森が友見に対し、
椎森「チェックアウトしよか?」
友見「『しよか?』って…(苦笑)」
友見が素気味に椎森の発言のおかしさに突っ込む。
友見がフロントに行き、
友見「お二人で3万円になります」
椎森が宿泊代を払い、テーブル付近に置かれた黒ボストンバッグを持ち、
岩崎とともに去っていった。
⑷
吉田「僕たちもチェックアウトします」
友見「お二人で3万円になります」
裕がポケットから財布を取り出そうと手を入れりが何も無く、
吉田「財布、金庫に入れ忘れたままでした」
裕と敦史が客室に財布を取りに向かった。
⒑
⑴
ロビーには、女将の友見一人。
チンピラ風の男、大黒(大黒笑けいけい)と健太(けんたくん)
大黒「じゃますんでー」
友見「じゃますんやったら帰ってー」
大黒「あいよー」
大黒「、ってなんでやねん! こっちは用があって来とんや!」
友見「…、何の用ですか?」
大黒「健太、説明したれ」
健太が友見に対し、沖縄弁で捲し立てる。
友見「…?」
大黒「全く分からん!」
大黒が健太の話を止める。
大黒「何喋っとんや!」
健太「興奮したら沖縄弁が出てしまって」
大黒「なんや、『マーチャーマーチャー』とか聞こえたけど」
健太「『マーチャーマーチャー』は『イリチャーイリチャー』
大黒「イリチャー?」
健太「『イリチャーイリチャー』は『カーチャーカーチャー』
大黒「一生分からんわ! 引っ込んどれ」
友見「…」
⑵
大黒が友見に用件を伝える。
大黒「生瀬に用事があるんや」
行人と美優が上手端通路から現れ、友見に挨拶する。
行人「おはようございます」
大黒「生瀬、探したぞ」
行人が大黒たちの存在に気付く。
行人「なんでここに!?」
大黒「借金返さんかい!」
美優が行人に対し、
美優「借金があるなんて聞いてないわ!」
健太が美優に対し、
健太「姉ちゃん、ええこと教えたるわ」
健太「そいつ(=行人)の親が借金作って死んでな」
健太「そいつが親の借金の肩代わりしているわけや」
美優「行人さん本当なの!?」
行人が頷く。
美優「幾ら!?」
行人「1千万…」
美優「1千万って…!」
大黒「おい、生瀬」
大黒「とんずらして結婚しようとか、何考えてんねん!」
行人「見逃してください!」
大黒「甘ったれんな!」
大黒「あかん、こいつ。事務所へ連れて行け」
健太「へい!」
健太が行人の腕を掴み、無理矢理連れて行こうとする。
⑶
そこに、セカンドリゾート社長・瀧見と社員・湯澤が現れる。
瀧見「騒がしいですね」
瀧見が大黒たちに尋ねる。
瀧見「あなたがたは?」
大黒「借金取りや」
大黒「こいつ(=生瀬)
瀧見「なら、私が代わりにお支払いしましょうか?」
美優「助けてください!」
瀧見が1千万の小切手を取り出し、
瀧見「お受け取りください」
と、小切手を美優に渡そうとする。
美優が小切手を手にしようとすると、瀧見が小切手を引っ込める。
瀧見「ただし、条件があります」
瀧見「旅館の権利書と交換です」
美優「そんな…」
美優が手を降ろす。
瀧見「なら、彼がどんな目に遭おうと知ったことではない」
瀧見「では、この話は無かったことに」
瀧見が去ろうとする。
⑷
様子を見ていた友見が瀧見に対し、
友見「待ってください!」
友見「旅館、お譲りします!」
美優「お母さん、何てこと言うの!?」
美優「この旅館はお父さんと一緒に作り上げた大切な場所でしょ!?」
友見「いいのよ」
友見「お父さんが生きていても、
友見が瀧見に対し、
友見「権利書、お持ちしますね」
友見が上手端通路に消え、権利書を持ち戻ってくる。
⑸
友見「ご確認を」
友見が権利書を瀧見に渡そうとする。
と、その時、中央奥通路から裕の声がする。
吉田『待ってください!』
裕と敦史が中央奥通路から現れる。
吉田「権利書を渡したらダメです!」
吉田「生瀬と瀧見はグルです!」
友見・美優「えっ?」
瀧見「君は何を言っている」
湯澤「言いがかりはよしてください!」
吉田「昨日の夜、生瀬の電話を聞いたんや!」
湯澤「証拠はあるんですか?」
吉田「…、ない」
湯澤「なら、他人は口を挟まないでください」
⑹
瀧見が友見から権利書を受け取り、内容を確認する。
瀧見「確かに」
瀧見が小切手を友見に渡す。
瀧見が湯澤に権利書を渡し、二人が去っていく。
玄関付近で湯澤が権利書を落としてしまう。
すると、玄関付近にいる行人が湯澤に対し、
行人「湯澤さん、落としましたよ」
行人が権利書を拾い湯澤に渡す。
友見「えっ、なんで秘書の名前を知ってるの!?」
吉田「言ってみろ!」
行人「それは…、」
湯澤「言っちゃダメ! それ以上、言ったら、」
湯澤「
湯澤「旅館の権利書を奪い取ろうとしたことがバレてしまう!」
友見「何ですって!」
湯澤「ほらバレたー!」
吉田「お前が言うたんや!(呆れ)」
やはり、セカンドリゾート・借金取り・行人は共謀していた。
⑺
行人が開き直り、悪人顔になる。
行人「その通りや」
美優「でも、行人さん、
行人「アホか!」
行人「お前を襲った奴らもグルじゃ」
行人「それを信じこみやがって、このブスが」
美優「酷い…」
⑻
裕が湯澤のもとまでダッシュし、権利書を奪い取り、
行人「返せ!」
吉田「返すか!」
行人「しゃあないな」
行人「お前ら、やれ!」
行人が大黒と健太に指示すると、二人がドスを取り出し振り回し、
美優を人質にして上手端に移動する。
下手玄関付近に裕・敦史・友見、
上手端に共謀する行人・大黒・健太・瀧見・湯澤、人質の美優、
吉本新喜劇の一般的な人質場面が出来上がる。
その7に続く