⒊
⑴
番頭・瀧見
従業員・多和田
従業員・美優
3名。
瀧見が多和田と美優の接客態度を叱る。
瀧見「最近、酷い」
瀧見「特に美優。このままやったらクビになるぞ?」
美優「千葉って人のせいよ」
美優「納得できない。2週間前にやってきて、いきなり支配人なんて」
美優「…」
美優「私、何を言ってるのかしら!」
一瞬セリフを見失った様子の美優。
美優「とにかく、納得できない!」
美優は人事への不満があろうことか接客態度に出てしまっているよう。
瀧見「これも旅館のためや」
瀧見は人事について何か知っている様子。
瀧見「多和田、お前(の接客態度が悪い理由)は?」
多和「僕はノリっす」
と、片手は拳を握り、片手は手を開き合掌するカンフー式の礼をする。
頭を下げず、顔を突き出して。
瀧見「ノリで接客すな!」
⑵
美優「さっきの『旅館のため』って…」
瀧見は千葉が即座に支配人になった経緯を二人に話す。
瀧見「先代の旦那さん女将さんがいた頃は、この旅館も賑わっていた」
瀧見「でも、二人が亡くなって、客足が遠のいた」
瀧見「今の女将さんも一人で凄く頑張っているけど、なかなか業績が上がらんでな…」
瀧見「そんな時、東京のロイヤルリゾートの傘下になる話があった」
瀧見「女将さんは花月旅館の看板を残すために、受け入れたんや」
多和「なるほど。パパ活女子が増えたのは大人のせいってことですね」
瀧見「何の話!?」
多和田流のボケだが、生々しい話のせいか客席の反応は薄め。
多和田が空気を読み、慌てて物語に戻す。
多和「あっ、それで支配人として千葉さんが配属されたってことですね」
瀧見「そういうこと」
瀧見「まあ、俺は女将さんについていくだけや」
⑶
美優「でも、千葉さん、私に酷いことばかり言うんです!」
美優「仕事中寝るな!、部屋で花火するな!、客に寝起きドッキリ仕掛けるな!って」
瀧見「全部、正しい!」
多和「まだあるんです」
多和「僕には、『接客は大事だから真心を込めて仕事しなさい』って」
美優「あいつ、やべえな!」
瀧見「やばいん、お前らや!」
瀧見「頼むから、千葉さんの言うこと聞いてくれ」
美優「できません!」
多和「無理っす!」
瀧見「何やねん!、お前ら。こっちが頭下げてるのに」
瀧見と美優・多和田の突き合いから次第に揉み合いに発展する。
⒋
⑴
番頭の瀧見が従業員の多和田・美優と小競り合いしていると、
騒ぎを聞き付け、物語の主役・新支配人の千葉(千葉公平)がフロント奥から現れる。
千葉が標準語で、
千葉「何してるんですか!」
千葉が三人の間に入り、多和田・美優と瀧見を引き離す。
千葉「喧嘩しないで!」
すると、美優が千葉に対し、
美優「この、出来損ないのクソ東京野郎がっ!」
千葉「言い過ぎ。出てきて2秒で悪口って」
千葉「…、君もさっき失敗してるよ?」
と、先程の美優の台詞忘れを指摘する、千葉。
美優「…(苦笑)」
⑵
千葉「みんな、仲良くしてください」
美優「あなたのせいよ!」
多和「美優ちゃん、もっと言っちゃいなよ!」
美優を嗾ける、悪人・多和田。
千葉は従業員によく思われていないことを自覚しているようで、美優に尋ねる。
千葉「どうして僕のことが嫌いなの?」
美優「私はこの旅館が好きなんです!」
本当に旅館が好きならば、客の方を見て丁寧に接客すべきでは?と言いたくなるが…
これまでの接客態度の限りでは、
客のためではなく、自分(が居易い場所)のための旅館と考えているようにしか見えない。
美優が千葉に対し
美優「あなたは伝統を汚してる!」
美優「インスタ!、Wi-Fi!、そんなもの要らない! このままでいい!」
千葉「…、良かれと思って始めたんだけど、やり過ぎちゃったみたいだね。ごめんね」
千葉「多和田君は何で僕のことが嫌いなの?」
多和「僕はノリっす」
千葉「えっ、ノリ?」
千葉「仲良くしようよ?」
すると、美優が千葉が睨み付け、
千葉に向けて走り出し、思い切りボディアタックしてから上手端通路に消えた。
千葉「えっ?」
千葉「暴走トラックかと…(苦笑)」
瀧見が美優について、千葉に対し、
瀧見「変化に付いていけてないだけやと思います」
⒌
⑴
千葉が瀧見に尋ねる。
千葉「女将さんは?」
瀧見「女将さんやったら、今、町内会に行っています」
瀧見が下手袖方向を見て、
瀧見「言うてたら帰ってきました」
女将の幸恵(鮫島幸恵)が町内会から戻ってくる。
幸恵は玄関を開け、鼻を詰まらせたようなねっとりした言い方で、
幸恵「ごめんっ遊っばっせっ」
と、ベテラン座員風の出ギャグを披露する。
千葉・瀧見「…」
幸恵が普通の言い方で、
幸恵「戻りました」
千葉「女将さんはそんなこと(=出ギャグ)やんない方がいい。(苦笑)」
幸恵「…(苦笑)」
幸恵の表情から慣れないことをした恥ずかしさが読み取れる。
⑵
瀧見が先程の年配カップル客のことを幸恵に伝える。
瀧見「飛び込みのお客さんが二人いらっしゃいました」
幸恵「このご時世、嬉しいわ」
千葉が従業員に仕事を指示する。
千葉「では、瀧見さんはお客様に飲み物の用意をお願いします」
瀧見「分かりました」
瀧見が上手端通路に向かう。
千葉「多和田君は掃除を」
すると、多和田が千葉が睨み付け、
千葉に向けて走り出し、思い切りショルダーアタックしてから上手端通路に消えた。
千葉「ははっ、困ったもんだ…」
その4に続く