[開演前]
ケツメイシやSHISHAMO等、タイトルに『逆転』が付く楽曲が流れました。
[前説]
⒈
島田一の介さんと浅香あき恵さん、かつての漫才コンビが登場し、
客席が沸き上がりました。
内容云々より、お二人が前説をしていること自体が楽しい時間でしたでしょうか。
⒉
前説の締め
一の介さんが観客に対し、
島田「私が『逆転新喜劇!』と言ったら、皆さんは拳を突き上げて『オーッ!』で」
劇場では漫才等でも観客に発言させる手法を控えている時期で
前説も声出しを伴わない拍手での締めが標準化しているため、
観客が戸惑いながら拳を突き上げる。
島田「声が小さいっ! もう一回!!」
一の介さんの要求に観客が戸惑いながら、また拳を突き上げる。
何度か繰り返した後、
島田「それでは、逆転新喜劇!、よろしくお願いしまーす!!」
島田一の介さんの天然ぶりが垣間見える前説でした。
『東京から来た救世主!?』
[セット紹介]
花月旅館のロビー
⒈
舞台上手奥にフロント
⒉
下手端・手前側…玄関通路
下手端・奥側…従業員用通路
中央奥…客室通路
上手端・手前側…従業員用通路
上手端・奥側…フロント奥通路
※
補足
同週本公演のセットを使用せず、本格的なセットを組み直しています。
[物語]
(敬称略)
⒈
⑴
舞台は花月旅館のロビー。
一の介(島田一の介)とあき恵(浅香あき恵)の中年カップルが到着する。
前説を務めた二人が本編で即登場し、客席が沸く。
島田「いやー、着いたなー!」
あき「懐かしいわね」
島田「30年ぶりや」
あき「あの時の鳳凰の間、最高だったわ」
島田「ほんまやな」
あき「あなたと初めて、む・す・ば・れ・た」
島田「き・お・く・に・ない(=記憶に無い)」
あき「どうしてよ!」
島田「冗談や」
⑵
島田「あき恵はやっぱり綺麗や。絶世の美女や」
あき「絶世の美女やなんて、もう、イヤやわぁー!」
とバッグをフルスイングし、一の介の顔面を叩く。
島田「…っ!」
島田「加減してくれよ!、歳なんやから」
あき「痛いの、痛いの、飛んでけー」
島田「飛んでった」
⑶
あき「あなたもイケメンね」
あき「目元がディーンフジオカ」
一の介が満更でもない顔をする。
あき「鼻筋が坂口健太郎」
あき「口元が伊藤健太郎」
あき「全体の雰囲気が温水洋一」
島田「なんでや!」
⑷
初々しい30年前を思い出したのか、二人が向かい合い、良い雰囲気になる。
あき「いっち」
島田「あっき」
あき「いっち」
島田「あっき」
手を取り合い、愛称で呼び合う、二人。
あき「あ・い・し・て・る」
島田「ワ・シ・も・だ・ぞ」
⑸
島田「久しぶりにやって?」
あき「できるかしら?」
あき恵が下手に行き、自分の鼻に手を当て状態を確認する。
あき「大丈夫。まだ、潤いがあるわ」
あき恵が鼻脂を一の介の頭皮にペタペタと塗り付ける。
島田「最高やで! あき恵の鼻脂が一番馴染むわ!」
あき恵が妖怪風に、
あき「イッヒッヒッヒッ」
島田も釣られるように怪しい笑いを見せる。
島田「ヒッヒッヒッ」
中年カップルは側から見ると若干?痛々しい部分もあるが、
二人の仲睦まじい様子が描かれる。
⒉
⑴
あき恵が一の介の頭に鼻脂を塗りつけ、
「イッヒッヒッヒッ」と怪しい笑い声で戯れ合っているところに、
旅館従業員の多和田(多和田上人)と美優(佐藤美優)がフロント奥通路から現れる。
多和田と美優は怪しげなあき恵たちを見て、
多和「うぇーっ!、何や!?」
美優「妖怪!?」
多和「美優ちゃん、灯油持ってきて!」
美優「分かった!」
二人の会話はあき恵に筒抜けだったようで、
あき「タンマッ!」
と、灯油を取りに行こうとした美優を止める。
多和「『タンマ』って…(苦笑)」
あき「私は灯油が無くても燃えるの!」
まるで鼻脂を誇っているように聞こえる。
あき「失礼ね、私たちは客よ?」
美優「お客様、失礼しました! でも、今、何をされてたんですか?」
島田「いちゃついてました」
美優「ああ、なるほど…」
引き気味の美優。
⑵
多和「ご予約の方は?」
あき「予約はしてないんだけど、近くで仕事があって寄ってみたの」
あき「部屋が空いてたら泊まりたいんだけど」
カップルらしき一の介とあき恵が一緒にしている仕事とは?
宿泊を要するほど遠方の仕事なら、事前予約が一般的では?
疑問点が多く、あき恵の宿泊理由は現時点ではどこか不自然に思えるが…
美優がフロントで空室を調べる。
島田「鳳凰の間は空いてますか?」
美優「…、すみません、空いてないです」
島田「残念」
あき「でも、一日泊まらせてもらえるなら、どんな部屋でも構わないわ」
美優が部屋を探す間、あき恵と一の介がテーブル席に座って待つ。
⑶
美優が部屋を用意できたよう。
美優「ご記帳、お願いします」
と、用紙とペンを一の介に渡す。
島田「鳳凰の間に泊まりたかったな」
あき「仕方ないでしょ?」
あき「私はあなたと一緒なら、どんな部屋でも、か・ま・わ・な・い」
島田「ワ・シ・も・だ・ぞ」
美優「は・や・く・書・け、早く書けっ!」
⑷
多和田が一の介たちに尋ねる。
多和「当旅館のご利用は初めてですか?」
島田「いえ、こいつ(=あき恵)と30年前に鳳凰の間に泊まりました」
すると、美優が一の介たちを弄り始める。
美優「つがい?」
島田「鳥ちゃうぞ!」
美優「すみません、ハゲワシかと…」
島田「は!?」
美優「さっきから、ハゲがワシって言ってるから」
島田「何を言うとんや!」
美優があき恵に対し、
美優「そっちはハシビロコウ?」
あき「鼻のデカい鳥ちゃうわ!」
島田「さっきから失礼やぞ!」
接客が不出来な美優の代わりに多和田が謝る。
多和「大変申し訳けーございません」
島田「毛ー!?」
多和「口がつるっと」
多和「つい、ぴっかり」
多和「ハゲまそうと」
と、立て続けに一の介の頭を弄る結果になり、一の介を更に怒らせてしまう。
島田「どこ見て言うてる?」
多和「…、ここ」
と、一の介の頭を指差す、多和田。
あき「失礼やろ!何ぬかしとんねん。舐めとったならあかんで。怒るでしかし!」
多和「おっさんになってますよ!?」
あき「おっさんじゃないの、今のはやっさん」
多和「やっさんもおっさんですよ」
定番ネタで客席を沸かせる。
あき「この人たちじゃ話にならないわ」
あき「どなたか居ませんかー!」
と、奥に呼びかける。
⑸
瀧見「はーい!」
番頭の瀧見(瀧見信行)がフロント奥通路から現れる。
瀧見「どうかされました?」
あき恵が多和田と美優の接客態度を説明し、瀧見が二人を叱る。
瀧見「お客様に謝れ!」
すると、多和田と美優は顔だけ前に突き出すふざけた感じで、
多和・美優「悪りぃ」
瀧見「ええ加減にせえよ!」
二人の代わりに瀧見が一の介たちに謝る。
瀧見「鳳凰の間の次に豪華な鶴の間をご用意いたいしますので」
瀧見「料金はそのままで結構です」
瀧見の言葉に一の介たちが機嫌を取り戻す。
⑹
瀧見「多和田。お客様に鍵をお渡しして」
多和田が一の介に部屋の鍵を渡す。
多和「ツルツルの間でございます」
島田「失礼やぞ! ほんで、あんたもツルツルやないか!(苦笑)」
多和「…(苦笑)」
瀧見「鶴の間にご案内します」
島田「ワシらで行く!」
一の介が誰かの物真似らしきダミ声で、
島田「バカヤロゥ!」
一の介が客室通路に消えた。
多和「…、誰(の物真似)?」
あき「今のは上田吉二郎よ」
あき恵も客室通路に消えた。
その3に続く