⒒
⑴
売店アルバイト・茂造
売店店長・大島
看護師・花子
三人。
下手奥通路から永田(=永田友梨)が現れる。
永田「どうしよう…」
永田「『娘に手を出して、責任を取らないなら、命は無い!』って」
永田「こんな男の体で死にたくないわ!」
⑵
そこに、男性もののジーンズを着て、髪を乱雑に結んだ女性、
谷川良輔(谷川友梨)が現れる。
(谷川→永田→←茂造・大島、という立ち位置で)
谷川が永田の映った写真を茂造たちに見せ、男っぽい声で尋ねる。
谷川「この人、知りませんか?」
その声を聞き、永田が谷川の方を見る。
永田「私の身体っ!」
谷川「…!」
谷川「やっと見つけたぞ!、俺の身体ーっ!」
永田「私の身体、返してよ!」
谷川「それはこっちのセリフや!」
谷川「何や、そのニューハーフみたいなメイクは!」
永田「そっちこそ、何、ダサい格好してるのよ!、寝癖も酷いし!」
永田「もう少し、女らしくしてよ!」
谷川が自分の胸を触る。
谷川「こんな身体のどこが女らしいんや!」
永田「私の体を触らないで!」
谷川「触った感触無いわ。こんなペチャパイ!」
発言している素の演者のことを考えると二重に面白くなる場面。
⑶
永田「私の身体を返してよ!」
谷川「俺の体を返せ!」
二人が取っ組み合いの喧嘩になる。
大島が谷川に尋ねる。
大島「落ち着いて!、…何があったんですか?」
谷川が身体の異変が起きた時のことを語り始める。
谷川「平成から令和に変わる5月1日、」
谷川「バスに乗っていて、運転手の居眠り運転で川沿いの土手で横転した」
永田「私も乗っていたわ!」
谷川「目が覚めたら、男の身体になっていた」
永田「私もよ!」
大島「もしかして、その時、二人の体が入れ替わったんじゃ…」
どうやら、サキとのデート日に事故に遭い、身体と心が入れ替わってしまった様子。
谷川「退院して、警察にバスに乗っていた人のことを聞いて探し回っていた」
茂造「ほんまやったんか…」
永田「だから、いったでしょ!」
永田(=心は友梨)が谷川(=心は良輔)に対し、
永田「とにかく、私の体を返してよ!」
谷川「俺の体を返せ!」
二人がまた、取っ組み合いを始める。
⑷
二人が言い争いをしているところに、
(下手端通路から)サキが現れる。
永田「見つかった!」
永田が谷川から手を離す。
サキ「良輔さん!」
サキの声に、谷川がサキの方を振り向く。
谷川「サキ!」
サキは良輔が女性の体になっていることを知らず、
サキ「…誰?」
谷川「俺や!、良輔や!」
谷川がサキに抱きつく。
サキ「やめてよ!」
サキ「何するのよ!、気持ち悪い!」
サキが谷川を突き飛ばす。
永田「何するのよ!、私の大切な身体に!」
サキが永田(=心は友梨)に対し、
サキ「良輔さん、他の女が好きになってしまったの!?」
谷川「サキ、誤解や!」
谷川「俺はこいつ(=永田)の身体が欲しいだけなんや!」
永田「身体だけが目当てなのよ!」
谷川「そっちも身体目当てやないか!」
サキ「やめてーっ!!」
サキは、婚約者(=永田良輔)が別の女性(=谷川友梨)と恋をしたと勘違いしてしまう。
(サキ→←谷川←永田、という立ち位置で)
サキ「最低ね!」
サキが谷川を平手打ちする。
すると、永田が前に出る。
(サキ→←永田←谷川、という立ち位置)
永田「私を打たないでよ!」
サキ「この、浮気者!」
サキが永田を平手打ちする。
すると、谷川が前にでる。
(サキ→←谷川←永田、という立ち位置)
谷川「俺の顔を叩くな!」
サキ「この、泥棒猫!」
サキが谷川を平手打ちする。
また、永田が前に出る。
(サキ→←永田←谷川、という立ち位置)
永田「何すんのよ!、私の顔を打たないでよ!」
谷川「サキにそんな態度、やめろって!」
谷川が永田の手を引っ張る。
永田「邪魔しないでよ!」
永田が谷川の顔を平手打ちする。
永田「自分で自分の顔を殴っちゃった!」
永田「イヤーッ!」
永田「イヤーッ!」
永田「イヤーッ!」
茂造は入るタイミングを見計らっているようで、
この後何度か「イヤーッ!」を言わせた後に永田をビンタする。
谷川「俺の体を叩くな!」
サキ「何でこんなことになったのかしら!」
茂造「はは…、食べ過ぎや」
⑸
大島がサキに説明する。
大島「二人の心と身体が入れ替わってしまったみたいで…」
サキ「はーっ!?(呆れ)」
谷川「ほんまや!」
永田「本当なのよ!」
サキ「ふざけないで!」
すると、谷川(=心は良輔)が客席の方を向き、サキとのエピソードを話し始める。
谷川「今、サキが付けている真珠のネックレス…」
谷川「それは、昨年5月1日のサキの誕生日に俺がプレゼントしたもんや」
谷川「その時、俺はサキにこう言った」
谷川『これがほんまの豚に真珠やな』
谷川「するとサキは、」
豚の足のように手を丸めた腕を上げ下げしながら、
谷川『ほな、これは豚足か!』
谷川『コッコッ!、コッコッ!』(←豚の鳴き声。正確には、コとゴの中間の発音)
谷川『誰が豚やねん!』
谷川『ワシはアザラシや!、アーアー!』
谷川「…って、ノリツッコミした」
サキ「そのことを知ってるのは良輔さんだけ!」
茂造「ほんまに言うたんか?」
茂造「ほんまかどうか、本人が言うの、聞いてみたいな」
サキ「…(苦笑)」
茂造「『ジジイ、何おかしなこと言い出すねん!』みたいな顔、すな!(苦笑)」
サキが先程の谷川のセリフを再現し、笑いを起こす。
茂造「テンポ、間…最高です!」
⑹
サキも心と身体が入れ替わった話を信じたよう。
サキ「良輔さん!」
谷川「サキ!」
サキと谷川(=心は良輔)が抱き合う。
すると、アドベンチャーワールドの曲が流れ出す。
♪
Always together 何が起きても
Always together 歩いていける
大島「アドベンチャーワールドの曲やないか!」
サキが谷川の腰に手を回し両腕で固定し、
曲に合わせ谷川を宙に浮かせ、回転させる。
愛を確かめ合う、二人。
茂造がスマホを取り出し、
茂造「もしもしー」
皆がズッコケる。
茂造「ワシ、今回、この場面が一番好き!」
一瞬で仰向けになる、サキ。
茂造「重力に身を任せすぎや」
小柄な谷川がサキを必死で起こし上げる。
茂造「介護やないか。(苦笑)」
谷川とサキがまた抱き合う。
⑺
手島と吉田が下手奥通路から現れる。
手島は永田(=心は友梨)を見て、
手島「おった。逃げ回りやがって!」
手島は谷川(=心は良輔)と抱き合うサキを見て、
手島「女同士で抱き合うなんて、何しとんや!」
サキ「この人(=谷川)が恋人の良輔さんなの!」
手島「何を血迷ったことを!」
手島が永田に対し、
手島「お前のせいでサキがおかしくなってしもうたやないか!」
吉田「落とし前付けさせてもらうぞ!」
吉田が永田に近づこうとすると、間に谷川が入る。
谷川「俺の身体を傷付けるな!」
永田「イヤーッ!」
永田が入り口通路に逃げ、吉田・手島・谷川・サキが永田を追う。
吉田「ぶち殺す!」
手島「待たんかいっ!」
谷川「俺の身体を返せ!」
サキ「良輔さーん!」
サキは両手をキューピー人形のようにして追う。
茂造「見た目はアザラシやのに、走り方はペンギンや。(苦笑)」