⒔
⑴
今別府は、一ヶ月ずっと安世に告白しに来ていて、
安世も困っているよう。
吉田が安世に対し、
吉「はっきり言ったら?」
瀧「断ったら、後で何されるか…」
瀧「だから、はぐらかしてるんやけど…」
⑵
吉田・信濃・諸見里が舞台下手に集まる。
皆、安世と瀧見に聞こえないように、小声で喋る。
吉「俺らで何とかせな」
信「あんな奴に、安世さんを取られたくないですからね!」
諸「僕たち、ライバルですけど、一旦、休戦しましょう!」
諸見里が案を出す。
諸「安世ちゃんがイチャついているところを見せるんです」
諸「あのヤクザ、純情そうやから、諦めるんちゃいます?」
吉「イチャつく言うても、安世ちゃんに彼氏おらんぞ?」
諸「そこはお芝居するんです」
吉「行けるかもな!」
⑶
吉田が瀧見と安世のもとに行き、
吉「僕に良い案があります!」
信濃が吉田を諭す。
信「違うでしょ?…なんで、横取りすんの?」
吉田が言い直す。
吉「…諸見里に言い案があります」
瀧見と安世が諸見里の案に乗る。
⑷
瀧「ほな、彼氏役、誰がする?」
吉田・信濃・諸見里が勢いよく挙手する
瀧見はあっさりと、
瀧「ほな、一番先にバイトに入った、吉田君で行こう」
瀧見が舞台下手袖を見て、
瀧「あのヤクザが来たわ!」
瀧見以外は舞台上手袖に隠れ、今別府が現れるのを待つ。
⑴
今別府・タックル・本山が現れる。
今「待たせたな!」
今「安世ちゃんは?」
瀧「トイレに行ってます」
瀧「あの…実は、安世には彼氏が居ます」
瀧「あなたには知らせておこうと…」
今「彼氏って誰や!」
瀧「うちの店のアルバイトです」
瀧「隠れて見てたら、分かりますので…」
瀧見・今別府・タックル・本山が(舞台下手袖の)茂みに隠れる。
⑵
様子を見ていた安世が現れる。
続いて、吉田も現れる。
(舞台中央の屋台前で、安世→←吉田、というポジション)
安世と吉田が向き合う。
安「告白されたけど、私、どうしたらええんかな?」
吉「だ、だ、だ、大丈夫やで!お、お、俺がおるから」
安世と二人になり、明らかに緊張している、吉田。
吉田は彼氏らしく、安世背中に腕を回すが触れられず、
腕を安世の背中に回しては戻す、を繰り返す。
茂みで見ている今別府は、
今「ほんまに彼氏か?」
瀧「あかん、緊張してもうてる」
瀧見が舞台上手袖にサインを送り、
諸見里が吉田を舞台上手袖に連れて行く。
⑶
吉田の代わりに、信濃が現れる。
(舞台中央の屋台前で、安世→←信濃、というポジション)
安世と信濃が向き合う。
安「告白されたけど、私、どうしたらええんかな?」
信「落ちつきましょ!」
信「冷静に、リラックスしましょ!」
信濃はそう言い、スマホをタップする。
すると、B'z『LOVE PHANTOM』の哀しげな前奏が流れ始める。
信濃は客席の方を向き、足を少し開き、握り拳で手をおろし、
PVの稲葉浩志のように力強くも哀しい目で遠くを見つめる。
前奏の間、瀧見と今別府が信濃の姿にツッコミ合う。
瀧「あいつ、全然、動かん!」
瀧「よう耐えられるな!なんちゅうハートや!」
今「後で怒られるパターンや!」
瀧「どういうこっちゃ、これ!」
今「ハートが強すぎる!」
瀧「↑それ、俺が言うたやつや!」
今「今はそれどころ、ちゃうやろ!」
瀧「曲調が変わっても、全然、動かん!」
歌が始まると、信濃がしなちゃんダンスをする。
曲終わりで、氷室京介風の決めポーズをするがタイミングを外し、
直後にもう一度決めポーズをして終わる。
『しなちゃんダンス』Full Ver.を踊り終えた信濃が安世に対し、
信「こういうことです!」
瀧見は思わず、
瀧「向こう行けっ!」
今「一体、誰と付き合ってんねん!?」
⑷
今度は、諸見里が現れる。
安「告白されたけど、私、どうしたらええんかな?」
諸見里は安世に対し、
諸「安世さん、僕の彼女やんなあ?」
安「はい…」
諸「彼女やったら、靴紐、くれへん?」
靴紐を右耳から左耳に通し、デンタルフロスのように何度も左右に引っ張るような仕草をし、
諸「こう、したいんや」
諸「安世さーん!」
諸見里が安世に勢いよく抱きつこうとする。
安「キャーッ!」
安世が逃げ、諸見里が追いかける。
⑸
見兼ねた吉田と信濃が現れ、諸見里に対し、
吉「何してんねん!」
諸「えっ?…今、僕が安世さんの『彼氏役』でしょ?」
今別府・タックル・本山は諸見里の言葉を聞き逃さず、
今「待たんかい!」
タ「彼氏役やと!」
本「嘘ついてたんか!」
今別府がタックルと本山に対し、
今「力尽くで安世ちゃんを連れてこい!」
タックルと本山が安世に近づこうとすると、吉田が前を塞ぐ。
吉「安世ちゃんには触れさせんぞ!」
タ「やかましい!ヤクザをなめてるみたいやな!」
タックルと本山が吉田に一歩近寄る。
すると、信濃と諸見里が吉田の更に前に立つ。
信「安世さんは連れて行かせない!」
諸「安世さんを絶対に守る!」
タ「そうか!」
タックルが信濃と諸見里を殴り倒し、本山が二人に蹴りを入れる。
⑹
タックル達の一方的なやり方に、吉田が怒る。
吉「お前ら、やり過ぎやろ!」
吉「許さんぞ!」
タ「ヤクザに楯突くっちゅうんか!」
吉「やったる!」
吉田がタックル達に殴り掛かろうと、距離を詰める。
⑺
その時、安世が、
安「待って!」
安世の声を聞いた吉田が立ち止まる。
安「曖昧な態度を取った私が悪かった…」
安世が今別府に対し、
安「付き合えません」
安「私のことは諦めて、帰ってください」
タ「坊ちゃんに恥かかせやがって!」
今別府がタックルに対し、
今「もう、ええ!」
タ「けど…」
今「もう、ええ!」
本山も加わり、
本「でも…」
今「もう、ええ!」
タ「やっぱり…」
今「もう、ええ!」
本「いや、しかし…」
今「いつまでさせるんや、このくだり」
⑻
今「好きになった子にここまではっきり言われたら、諦めるしかない」
今「…死にたいわ」
その時、本山が舞台下手袖を指差して、
本「坊ちゃん、向こうに可愛い子が居ますよ!」
今別府は笑顔になり、舞台下手袖を見て、
今「お嬢さーん!」
そのまま、三人が去っていった。
吉「変わり身、早っ」
その9に続く