裕とアキコが二人で居ると、
役柄『借金取り』、青スーツを着た奥重(奥重敦史)が現れる。
奥「邪魔すんでー!
 ニヤリ
裕「邪魔すんやったら、帰ってー!」
奥「あいよー!」

奥重が去っていった。

(戻って来ず)


役柄『お金持ちの男』、白スーツに金ネクタイをした伊賀(伊賀健二)が現れる。

伊賀は等間隔で100万円の札束を床に置きながら、旅館に入ってくる。
裕「あの…何してるんですか?」
伊「マーキングです
ニコニコ
伊「帰れるように
ニコニコ
裕「…?」

伊「私はこういう者です」
と、内ポケットから名刺ではなく、一万円札を取り出し、裕に渡す。
裕「お札やないかい!
タラー


伊「単刀直入に申し上げますが…」
伊賀が用件を切り出そうとした時、
借金取りの奥重が、伊賀が床に置いた札束を拾いながら現れる。

伊賀はその様子を見て、焦る。
伊「僕が帰られなくなるでしょ!
プンプンアセアセ

伊賀が奥重に問う。
伊「どっから、拾ってきた!?」
奥「…富田林から
口笛

伊「帰られへんやないか!
ムキーアセアセ
ア「お金あるんやし、タクシー使ったら帰れるでしょ?
ウインク
伊「…そんな手がありましたか。(苦笑)


伊賀が裕達に対し、
伊「こんな奴(=奥重)は放っておいて、話がしたいんです」

『こんな奴』と言われた奥重は居場所を失くし、
旅館ロビーの下手奥端に下がり、存在感を消して、場面をただ見守る。
笑い泣き


伊賀が自己紹介する。
伊「祇園カンパニーの伊賀と申します」
伊「単刀直入に…この旅館を売っていただけないでしょうか?」
裕「父親から受け継いだ大切な旅館です」
裕「売るわけにはいきません」

新喜劇で聞き慣れた台詞に、伊賀は、
伊「言うと思った
ニコニコ」 笑い泣き

伊「お金なら幾らでもあります」
伊賀は、「アッ アッ」と言いながら、
内ポケットから次々と一万円札を出し、床に散乱する。

裕「『アッ アッ』って、今のなんですの!?(苦笑)

素でネタに気づいていない、裕。
伊「…カオナシです。(苦笑)」
裕「…」
裕「本当に、すみません
タラー

素っぽく反省する、裕。 笑い泣き

進行に影響が無いように、
アキコがさり気なく、落ちた一万円札を片付ける。


裕「とにかく、お金の問題じゃないんです!」
裕「旅館は売りませんから!
プンプン

伊「分かりました。少し、待ちます」
伊「ただ、次来た時、売らなかったら、こうなります」
と、一言セリフのボックスから短冊を取り出す。
伊『ほらっ、祭りだよ』
笑い泣き

伊「…」
伊「良く、考えておいてください
ニヤリ

伊賀が去っていった。

 
 


裕とアキコ、
そして、旅館ロビーの下手奥端に居る奥重、三人。

自分の出番と奥重が動こうとした、その時、
岩橋の叫び声が客室通路から聞こえてくる。
岩「大変なことになったー!
びっくりアセアセ

岩橋は人間の顔に戻ったが、今度は両目が飛び出ている。
笑い泣き
(飛び出した目の小道具を目で押さえている)

奥重はまた、旅館ロビーの下手奥端に行き、存在感を消して待機する。
笑い泣き


そこに、役柄『警官』の兼光(プラス・マイナス兼光)が現れる。

アキコの電話を受けて、旅館にやってきたのが兼光のよう。

兼「どうも、富田林警察の兼光です!」
兼「『面接中』に逃げた容疑者を追い掛けてきました!」
正しくは『取調中』・『弁護士の接見中』等と思われるが、
即興劇で喋る方も聞く方もいっぱいいっぱいなのか、
裕もアキコも指摘することなく、話が進む。


兼「逃げた容疑者は、変なカプセルを売っているんです」
兼光は岩橋を見て、
兼「被害者の方ですね?」

裕「顔が馬になった後、今度は目が飛び出して…」


兼「犯人の口癖は…」
と、一言セリフのボックスから短冊を取り出す。
兼『きつねうどん、買うてこい!』

微妙なチョイスになってしまい、
兼光はその場に居づらくなったか、
拳銃の発射音と悲鳴、二つの効果音を立て続けに出す。
『バンッ バンッ』
『キャーッ!』

兼「犯人は向こうか!?
プンプン
兼光が舞台上手奥の通路に消える。

岩橋が猫の鳴き声等、効果音を好き勝手に押していると、
一時的に機械の調子がおかしくなり、
小田和正『言葉にならない』が逆再生され、
1960年代末期のサイケデリック・ロックのように、カッコ良く聞こえる。

裕「この旅館、どうなってんねん!?
アセアセ笑い泣き


そこに、チャラ男・大島が現れ、
裕に人参を渡す。

大「ばぁい!
キラキラ

大島が去っていった。

裕「さっきから、あいつ、何なん!?
タラー笑い泣き


岩橋が何かを思い出す。
岩「馬に餌やるの、忘れてた!
びっくり

岩橋は、裕が手に持つ人参を奪い、パーキングに向かった。


アキコが裕に、
ア「番頭さん、ちょっと大事な話があるんやけど、奥いいですか?」

アキコと裕が舞台上手奥通路に消える。

アキコの悪巧みで、
旅館ロビーの下手奥端で一人にされる、奥重。 笑い泣き

 
その7に続く