神の設計図38号  
  2017年11月18日

 

「対称性の原理」とは(6)

 

――宇宙は「ペアー宇宙」になっています!

 

宇宙は、「対称性の原理」で設計されている。相反する2つの要素が同時にある。その結果、総エネルギーが保存される。

 

数式の「不変性」が維持される。数式の「本物性」が保障される。「相対性理論」「量子力学」そして「超ひも理論」根底に流れる原理が、「対称性の原理」である、と言うことを前回まで述べてきました。

 

この「対称性の原理」に徹底的に拘った天才・理論物理学者が、ポール・ディラック(19021984年、82歳没、イギリスでした。

 

彼は幼少の頃から、母親から「お前は天才なんだよ」と言われ続けて育ったとのことです。実際にその後のディラックは、物理学者となり、その「天才性」を発揮していきます。

 

まずディラック方程式を発見します。

 

そして、ケンブリッジ大学のルーカス教授職という名誉職に就きます。さらに、新しい数学的概念・スピノルを生み出します。

加えて、無次元量・1040という大数仮説を提示したことなどです。またディラック賞1985年に設立されています。

 

彼は「対称性」という数学的な「美しさ」鋭敏に感受する能力があったようです。その「対称的美しさ」に従って作り出した数式すなわち「ディラック方程式」には、2つの画期的な発見がありました。

 

1つは電子がもつ、「磁石性」と「自転性(スピン)」が、電磁力を作り出していること。

 

2つ目は、「反粒子」という当時誰もが想像もしなかった「未知の反粒子」を予言したことです。

 

 

宇宙には「設計者」がいる!

 

 

「反粒子」とは、質量は粒子と同じだが、「電荷」反対のものです。電子(マイナス電荷)の反粒子は、陽電子(プラス電荷)となります。

 

もしこの「反粒子」がこの世に存在するとしたら、「粒子と反粒子」という「完璧な対称性」ある世界が作れることになります。

 

つまり、宇宙は、本当に「対称性の原理」設計されている証明にもなる訳です。このことは、宇宙には「宇宙の設計者がいる」ということをも意味しています。

 

「ディラック方程式」が示す「反粒子」に関して、当時の誰もが信じませんでした。ディラック自身、自分の数式を始めは疑いましたが、4年後の1932年に、宇宙線の中から反電子が実際に発見されたのです。その発見者はノーベル賞を受賞しています。

 

このときに、ディラック自身は、「自分が作った方程式は、自分が思っていた以上に賢かった」、と驚きを表したほどでした。

この反電子が、「反粒子」となる訳です

 

現在ではPET(ペット=ポジトロン断層撮影法)と言う医療用機器が、この反電子を使って運営されています。つまりPETは、陽電子という「反粒子」を発生させて、がん細胞を発見しているのです。

 

この「ディラック方程式」によると、宇宙には「粒子と反粒子」のペアーが存在する、ということを示しています。この意味はどういうことでしょうか。

 

 当たり前のことですが、この世は「反物質」の世界ではなく「物質の世界」です。物質は、「原子」から作られています。

 

これに対し、「反原子」から作られているのが、「反物質」です。ディラック方程式」によると、宇宙には「粒子と反粒子」のペアーが存在しますから、「反原子」から作られた「反物質の世界」があってもよいことになります。

 

ところがこの世は、「原子」から作られている「物質のみの世界です。なぜ反物質の世界はないのでしょうか。この問題が現代物理学の大きな謎の1です。

 

この反粒子は、非常に不思議な現象を引き起こします。それが対消滅(ついしょうめつ)」と言われている現象です。

 

ペアー((つい))の関係にある「粒子と反粒子」、「電子と陽電子」は、ぶつかると双方とも消滅してしまい、その代わりに膨大な光エネルギーが放出されます。この光への変換効率は、100%です。 

 

ですから、反粒子で出来た「反物質1グラム」が、もし物質と対消滅をおこすと、広島に落とされた原爆の約2.9倍のエネルギーが生じる計算になると言われています。

 

映画、『天使と悪魔』(2009年公開、トム・ハンクス主演)などで登場した兵器は、この反物質兵器です。

 

 しかし、宇宙を含め、自然界には反物質は、ほぼ存在していません。宇宙線にはわずかながら含まれていますが・・・。

 

加速器を使えば、反粒子を作り出すことは可能ですが、その費用は莫大なものになります。また保存もかなり難しく現実的ではありません。

 

「ディラック方程式」によって、すべての物質や素粒子に、反物質反素粒子が存在することが、解明されました。

 

今では、クオークを含むすべての素粒子に、粒子と反粒子が、対(つい)になって「セット」で存在することが明らかになっています。

 

実際に、茨城県つくば市にある「高エネルギー加速器研究機構」にある巨大加速器による衝突実験では、この反粒子を使っています。

 

電子と反電子を、光速の99.9999998%まで加速し、衝突させる実験です。その際、必ず別の粒子である「B中間子と反B中間子」が発生し、すぐに光となって両者は消えてしまいます。

 

ただそのときに、さまざまな軌跡を描きますので、その軌跡を分析して、反粒子の「性質」を探っているのです。

  

 

「宇宙」があれば、「反宇宙(はんうちゅう)」もある!

 

 

「ディラック方程式」を発展させると、物質があれば、反物質がある。があれば、反水(はんみず)もある。たんぱく質があれば、反たんぱく質もある、ということです。

 

もっと拡大すれば、地球があれば、反地球もある。宇宙があれば、反宇宙がある、と言うことをも、可能性としては考えられます

 

さらに極論を言えば、「あなた」と言う「人間」がいれば、宇宙のどこかに「反あなた」と言う反人間(はんにんげん)」が、存在するという可能性もある、ということです。

 

このような摩訶不思議な世界が、理論上は存在することを、「ディラック方程式」は教えています。

 

次回の39へ続きます。