俺は詩人だバカヤローと怒鳴つて社を出でて行くことを夢想す
『北二十二条西七丁目』田村元



ひと息、一直線の歌。
一直線の歌というのはまあまあよくあるが、
この歌にはそこに乗っていくスピードがある。



この歌は、早口で読む必要があるし、
ふつうに読んでいくと、自然と早口になっているはずである。




歌意は明瞭。




サラリーマンにとって、歌人や詩人という肩書きはまったく意味をなさない。
歌人や詩人というのは、社会経済的にはほぼ価値ゼロの存在だ。
なんだ経済このやろう、である。




が、作者は自身が詩人であることに「こだわり」を持っている。
社会経済的に無価値だと分かっていながら、持つこだわり。
そしてそのこだわりは、社会経済と絶対的に相性が悪い。





社会経済という絶対王政ににバカヤローと怒る。
怒るでしかし。





怒りは本気の怒りだろう。
けれども、この一首には不思議なコミカルさが見てとれる。

バカヤロー、という表記に、救いがあり、愛嬌がある。



一時期、「世界に対する違和感」とかいうワードがよく聞かれたが、
掲出歌をはじめとする田村作品から感じられるのは
「世界に対する違和感」ではなく、「世のなかとの折り合いの悪さ」である。
世界に対する違和感とかいって、かっこうつけんなよ、である。




ヒロイックなものに憧れながら、そうしたものが併せ持ついやらしさにも敏感。
敏感ゆえ曖昧にならざるを得ない人間の、
堪えにこらえた怒りがまぼろしのなかに炸裂している。