意識が戻ると、ボクは全身黒タイツの戦闘員に抱えられて桟橋の上を運ばれていた。
こいつら、ジョッカーや。ボクはジョッカーに誘拐されたんや。
身代金目的ってことはないやろな。きっと改造人間にされてまうんや!
夢や。これは夢なんや。お正月ボケでこんな夢、見とるんや!!
ボクを抱えた戦闘員が遅れる。
「イー!」
先輩株らしき戦闘員が振り向いて急かす。
「イー!」
ボクを抱えた戦闘員が応える。
そして、声を殺してボクに話しかけた。
「タカシ、わしや。心配いらへんさかいな」
「父ちゃん!なんで父ちゃんが戦闘員なんや」
「戦闘員かて仕事や。危険を伴う仕事やから稼ぎがええさかいな」
「父ちゃん、なにしとんねん。帰ろ、なあ、うち帰ろ」
「大丈夫や。父ちゃんがついとるさかい。おとなしゅうしとるんやで」
「イー!!」
先輩株がこちらを見て、苛立っている。
父ちゃんはボクをギュッと抱きしめて駆け足になった。
安いヘアリキッドのにおいがした。まちがいない、父ちゃんや。
ブォン!!
腹に響くエンジンを吹かす音にふりかえると、バイクに乗ったヒーローの姿。
お獅子ライダー!!
仮面ライダーみたいだけど、顔だけお正月のお獅子。唐草模様のマント。お囃子のBGM。
そんなはずない。だって、お獅子ライダーはボクが学校のノートに書いた落書きやないか!
まちがいない、これは夢や。
狭いパイル堤防の上を疾走、あっという間にボクたちに追いついてきた。
一斉に襲いかかる戦闘員たち。
「イー!」
「イー!」
「イー!」
なんのことはない、戦闘員たちは次々と桟橋の下へと突き落とされていく。
「お獅子トルネード!!」
お獅子ライダーが父ちゃんの肩をチョイとひねると、父ちゃんは駒のように回って落ちていった。
「ぼうや、もう大丈夫やでっ」
お獅子ライダーがボクを背中でかばう。
弱っちい戦闘員たちがライダーににじり寄る。
ボクは目の前の、唐草マントをなびかせたお獅子ライダーの背中を見つめる。
今や。今なら父ちゃんの仇、討てるやん・・・。
でもそのあと、ボクはどないしたらええねん。
ボクは目を閉じる。
夢や。ぜんぶ夢なんや。はよ覚めてえな、はようっ!
ボクは泣きながら、お獅子ライダーの背中に飛びつく。
$mooの再構築

ママさんがひとりで経営していたスナックは、駅裏の飲み屋街から外れたテナントビルの片隅にあった。盆暮れのかきいれどきですら、客はボクひとりという店だった。
ドアを開くと、店内にはいつもジェーン・バーキンが流れていた。壁には『時計じかけのオレンジ』のオリジナルポスターと、マリー・ラフォレの白黒ポスターが貼ってあったっけ。
もともとボクはカラオケなどしてうるさく呑むのは苦手なタチだったので、この店で焼酎をあおりながらママさんと映画談義をするのが無上の楽しみだった。
「ねぇ、ママさん、アレ、見せてよ」
深夜、ぐでんぐでんに酔っぱらったボクがお願いすると、いいかげん酔ったママさんも「あいよ」と愛想よく、ボクに背を向ける。
ワンピースのファスナーをころあいまで下ろすと、ママさんは姿勢を戻して煙草をふかしはじめる。ママさんはヘビースモーカーだ。
しばらく待っていると、ママさんの背中から翼がもくもく生えてくる。
いったん成長しはじめた翼は見る間に成長していく。
「どういう仕組みになってんの?」
ボクはいつものまぬけな質問をしてしまう。
「ハイ、これで限界」と、ママさんは翼を数回ストレッチして思いきり広げてみせる。ハクチョウの翼そっくりの翼を。
一枚一枚の羽根が透きとおるほど薄くレースのようだ。紫外線ライトに照らされた白シャツみたいに、翼全体が蛍光色のベールに包まれている。
「テレビとか出たらいいのに。絶対すごいよ、コレ」
「若いころだったらね。こんなバアサンになってからじゃイヤよ。もういい?」
「もうちょっとだけ」
そんないつものやりとりをしながら、ボクは翼を目に焼き付ける。
確かにどこにでも転がってそうな六十がらみの女と純白の翼との合成には無理があるかなあ、なんて思いながら。
「じゃ、おしまい」
ママさんのひと言で、翼はしぼむよう背中に隠れていく。
ママさんの求めに応じてファスナーを上げるときに見る背中は、たびれた女の背中に過ぎない。
「もう少し若かったらなあ」
ママさんが愚痴と煙を吐き出す。
ボクもなんだかせつなくなって、そんなときは思いきりバカバカしい映画の話なんかを始めて、ふたりでへんてこに盛り上がったりしたものだ。
そんなふうにして、何度あの店に通っただろうか。
結局、ママさんの翼を見たのは後にも先にもボクひとりになってしまった。
「あなた、タカシがまた拾ってきたのよ」
ネクタイを解くボクの背に、妻が不満そうな声をかける。帰宅早々、勘弁してくれよな。
「で?仔猫?仔犬?」
ボクの煩わしそうな声に気づいて、妻がさらに不機嫌になった。
「河童」
河童?
へえ、こんな町なかに?近年、河川の護岸工事の影響でめっきり数が減ったと聞いていたが。
着替えを済ませると、マンションのベランダに向かう。
タカシがダンボール箱を覗きこんでいた。
「おい、河童拾ったって?」
タカシの肩ごしに覗くと、一隅に河童が座っていた。
膝小僧を抱えて目を閉じたまま、じっと動かない。動かない・・・動かない。
「コレ、生きてんのか?」
タカシがキッと睨んだ。
「見つけたときは動いてたんだ。弱ってたけど、動いてたんだ」
さて、困ったな。
背中に妻の冷たい視線を感じる。
「タカシ、とりあえず晩飯食おう。河童のことはあとだ」

結局、後回し後回しにするうちに、翌日になった。
帰宅すると、妻がさらに不機嫌になっていた。
「臭うのよ。家中に臭いが伝染っちゃう」
君は非日常が嫌いなだけだろ?などと口が裂けても言えない。
「わかった、わかったよ。タカシと捨てに行こう」
ベランダに近づくと、確かに臭った。川魚が古くなった腐臭が脳天に突き刺さってくる。
ボクに気がつくと、タカシが心配そうに、
「コレ、生きてるかな?」と尋ねた。
河童は昨日から微動だにしていなかった。
両生類を思わせる緑の皮膚が干からびて、ビニル袋みたいにテラテラした光沢を帯びている。
「とにかく川に戻してやろう。河童は川がいちばんなんだ」
タカシが素直にうなずいた。

小雨が降る中、河童を拾った川辺に行った。
河原の石を踏んで川のせせらぎが聞こえる辺りまでくると、箱の中から音がし始めた。
ものすごく高い電子音のような。聴力検査のときの高い音みたいな。
川に近づけば近づくほど大きくなっていく。
これが河童の声なんだろうか。
水辺に箱を置いて、ボクたちが後方に下がると箱のフタが開いた。
小さな黒い影が箱から飛び出して川の中へと消えたのは、ほんの一瞬だった。
ボクたちのほうをふりかえることさえなかった。
河童は河童の戻るべき場所に戻っていったのだ。
「さあ、うちに戻ろう」
タカシにそう声をかけたのは、ボクがボク自身にボクの戻るべき場所を言い聞かせたかったのかもしれない。
そそっかしい泉の精がおりました。
泉に落っこちたきこりを助けた泉の精、岸辺の斧に向かって、
「あなたの落としたきこりは、金のきこりですか?銀のきこりですか?それともただのきこりですか?」
斧は何にも言いません。
「斧とまちがってきこりを落っことすなんて、そそっかしい斧ねぇ」


泉の精は私を助けあげると、岸辺の妻に尋ねたんです。
「あなたが落っことしたのは、白人の貴公子ですか、黒人のマッチョですか、それともこちらの貧相な親爺?」
すると妻、躊躇なく私を指さしました(喜)。泉の精が消えると岸辺に妻と二人。
妻「チッ全部、もらえんじゃねーのかよ!」


きこりが泉のほとりで休んでいると、カピバラを抱えた泉の精が現れました。
泉の精「あなたの落としたのは、赤カピバラ黄カピバラ茶カピバラのどれですか?早口で三回言ってから、選んでください」
きこり「・・・」
泉の精「さあ、どうぞ」
きこり「早口言葉で遊びたいだけでしょ?」
$mooの再構築

フフフ、じゃ、デザートとするか。
おや、おまんら『とちおとめ』じゃないかいね。
そねに赤うならいでよかよか。ういヤツじゃのう。
ガラスの器の中で、固く身を寄せ合いおって。怖いか?怖いのかぁ?
よしよし、じゃ、おまんからじゃ。そこになおれい。
スプーンの底で、エイッ・・・。
「お、おやめくださいまし」
お、逃げおったな。おとなしゅうしておれ。すぐにようなる。観念せい。ほれっほれっ!
「ご、御無体な・・・ヒッ」
初々しい体に、スプーンの痕が生々しい。そそりおるわい。これでもか、これでもか。えいっえいっ
「アア・・・だめ・・・」
だめよ、だめよと言いながら、赤い汁滴らせてもうグッジュグジュじゃないかあ。ほうれほれ~。
「アア・・・壊れちゃう・・・」
よ~し、このぐらいにしといちゃる。お次はどいつだあ?
いやもう、あっという間に『おとめ』たちはグッタリ、なんかもう陵辱の限りっ。
さあ、フィニッシュ。
おまんらに、練乳、ぶっかけちゃる~!
全員、どろどろの白濁を浴びろ~ウハハハハ、みんな俺のもんだあ!

「あなた・・・練乳イチゴ作りながら、ひとりごとはやめてもらえませんか。子どもたち怖がってますわ」
お、すまんすまん。