『成人式なんて誰が行くものか。
生まれて20年間経ったという、その単なる時間の長さになんの意味がある?
長い睫毛をつけたケバい振袖ギャル。酒を飲んで羽目をはずす羽織りのヤンキー。あんな奴らと一緒にされたくない。
本当に値打ちのあるオトナになってこその成人だ。タテマエだけの儀式なんて御免蒙る・・・』
キーボードを叩いていると、部屋の外から母親の声がした。
「今日は大切な日なんだから出てきておくれ」
「うっせーババア!」
部屋から出ないのも選択なのだ。ここから出るときは自分で決める。
「頼むよ。お客さんなのよ」
客?俺に?俺のほうに会う用などない・・・
次の瞬間、俺の部屋のドアが蹴破られた。
止めようとする母親をふりきって入ってきたのは、軍服姿の大男だった。
「出て行け!ここは俺の部屋だ!」
大男がギロリと睨んだ。
「ここがどこだって?」腹の据わった低い声。
「俺の部屋だ!」
俺の胸ぐらをつかんで軽々と持ち上げる。
「違う。ここは地球だ。そして地球は隣星と交戦中なのだ。成人になった貴様に徴兵命令が下ったのだ」
大男が手を放すと、俺はどかりとその場に崩れ落ちた。
俺の部屋を見渡し、棚に掛けてあったワンショルダーを俺に投げてよこした。
「これに荷物を詰めろ。10分以内だ。いいな」
「ムチャだ。これっぽっちじゃ・・・」
「遊びに行くんじゃない。グズグズするな」
俺が口を開こうとすると、男は拳銃を取り出し、俺に銃口を向けた。
「おまえに選択の余地はない」
俺は慌ててパックに下着類を詰め込む。
こいつに何を言ってもムダだ。こいつは上官の命令でここに来ているにすぎない。
とにかくここは従っておくしか・・・。
10分後、俺は軍用トラックの荷台に載せられ、大勢の若者たちとともに訓練キャンプへ向かった。
・・・
「むりやり前線に送られてから二十年になるかなあ。今じゃよかったと思っているよ。あの日を境に、俺も星人になれたわけだから。自分が何かに属している、この感じが最高なんだよな」
「実を言うと、俺もその昔強制的に徴兵されたのさ。歴史は繰り返すってわけだな」
戦場で言葉を交わす二人。そのどちらが、あるいはどちらかが、あの時の誰かなのだろうか。
まあいい。誰も彼も似たりよったり。
確かなことは星人であることだけ。