客足が遠のいたのを潮時に、店に入るとレジで彼女に声をかけた。
「あの、注文いいですか?」
「はい、どちらでございましょうか」
ボクはひとつのドーナツを指さした。
「コレ、ひとつ。コレの穴のとこだけ」
彼女、しばし停止。
「うけたわまりました」
おもむろに彼女は白い小袋を取り出し、ドーナツをトングでつまみあげ手際よく収めた。
「いや、ドーナツじゃなくて・・・」
「5円になります」
なりゆきのままに財布の中から金ピカの五円硬貨を出した。
硬貨を受け取った彼女は、レジの中へチャリン。
そして、いったん綴じた袋の中からドーナツを出してショーウィンドウに戻す。
次に、レジからさっきの五円硬貨を取り出してボクに渡した。
ボクの手には、空っぽの紙袋と五円玉。
「ドーナツの穴の代金として、五円硬貨の穴を頂戴しました。お買い上げありがとうございます」
・・・
一休さんかよっ。
彼女らしいといえば彼女らしい。負けるもんか。
「あの、もうひとつほしいのがあるんだけど」
「どちらでございましょうか?」
「君がいなくなった穴」
彼女の営業スマイルが翳った。
「そちらの商品は只今切らせております」
「君が出てって君の大切さがようやくわかった。君じゃなきゃ埋められないんだ、心の穴」
「申し訳ございません。そちらの商品はお時間をいただきませんと」
「いくらだって待つ。だから戻ってほしい。お願いだ」
彼女、しばし停止。
「うけたまわりました」
「え?」
「ご注文、うけたまわりました。今夜6時、ご自宅のお届けでよろしかったでしょうか」
彼女に屈託のない笑顔が戻っている。
いや、目もとが少し潤んでいる。
「あの、代金は?」
「こちらの商品、これほどになりますが」
彼女が右手の薬指を掲げた。
なるほど・・・リング、か。こればっかりは穴だけじゃ勘弁してもらえまい。
「大丈夫、今度はまじめに働くから」
店を去りぎわ、ボクの背に彼女が声をかけた。
「お客様、よろしかったですね、ゴエンがありまして」
ふりむくと彼女がウインクした。
・・・一休さんかよっ。
「あの、注文いいですか?」
「はい、どちらでございましょうか」
ボクはひとつのドーナツを指さした。
「コレ、ひとつ。コレの穴のとこだけ」
彼女、しばし停止。
「うけたわまりました」
おもむろに彼女は白い小袋を取り出し、ドーナツをトングでつまみあげ手際よく収めた。
「いや、ドーナツじゃなくて・・・」
「5円になります」
なりゆきのままに財布の中から金ピカの五円硬貨を出した。
硬貨を受け取った彼女は、レジの中へチャリン。
そして、いったん綴じた袋の中からドーナツを出してショーウィンドウに戻す。
次に、レジからさっきの五円硬貨を取り出してボクに渡した。
ボクの手には、空っぽの紙袋と五円玉。
「ドーナツの穴の代金として、五円硬貨の穴を頂戴しました。お買い上げありがとうございます」
・・・
一休さんかよっ。
彼女らしいといえば彼女らしい。負けるもんか。
「あの、もうひとつほしいのがあるんだけど」
「どちらでございましょうか?」
「君がいなくなった穴」
彼女の営業スマイルが翳った。
「そちらの商品は只今切らせております」
「君が出てって君の大切さがようやくわかった。君じゃなきゃ埋められないんだ、心の穴」
「申し訳ございません。そちらの商品はお時間をいただきませんと」
「いくらだって待つ。だから戻ってほしい。お願いだ」
彼女、しばし停止。
「うけたまわりました」
「え?」
「ご注文、うけたまわりました。今夜6時、ご自宅のお届けでよろしかったでしょうか」
彼女に屈託のない笑顔が戻っている。
いや、目もとが少し潤んでいる。
「あの、代金は?」
「こちらの商品、これほどになりますが」
彼女が右手の薬指を掲げた。
なるほど・・・リング、か。こればっかりは穴だけじゃ勘弁してもらえまい。
「大丈夫、今度はまじめに働くから」
店を去りぎわ、ボクの背に彼女が声をかけた。
「お客様、よろしかったですね、ゴエンがありまして」
ふりむくと彼女がウインクした。
・・・一休さんかよっ。