駅や道路の標識を見ながら目的地へ向かっても路線や道順を迷った経験はだれにもある。特に不案内な土地ほど頭の中がパニックになる。道路標識などのユニバーサルデザイン(UD)化が各地で進む中、バリアフリーの専門家は「利用者に与える情報を抑制することが心理的混乱を防ぐ」と提案する。UDの視点からだれにも分かってもらおうとするあまり、交通社会の過剰なお節介が危険を生む。(日出間和貴)

 ◆「行政の論理」を優先

 「道路案内標識のUD化」を掲げる熊本県は、ドライバーに分かりやすく、統一性のある標識づくりを進めている。例えば、県のシンボル・阿蘇山をピクトグラム(絵文字)で表記。交通の流れやドライバーの心理に与える影響を調査し、標識のあり方を探ってきた。

 県阿蘇地域振興局は「絵文字導入には観光地へのスムーズな通行と渋滞緩和の狙いがあるが、直接的な成果はまだ得られていない。しかし、利用者の6割以上が『分かりやすい』と受け止めている」と話す。

 国土交通省によると、標識の設置基準は道路法の「標識令」の原則に沿って決められる。国交省の「わかりやすい道路案内標識に関する検討会」(平成16年)の提言では「ユーザー重視」の視点が理念の一つに掲げられた。しかし、道路標識の乱れや分かりづらさを嘆く声は多く、「行政の論理」が優先されている現実もあるようだ。

 東大先端科学技術研究センター(東京都目黒区)の中邑賢龍(なかむら・けんりゅう)教授(人間支援工学)は「公共の看板や標識に一定のルールづくりが必要だ」と訴える。自閉症や知能障害者らの困難を低減する技術について研究する中邑教授は「一度に3つのことを言われて1つしか覚えられない障害のある人は、記憶と情報の処理ができないというパニックが起きている」と説明する。

 ◆「東京まで◯◯キロ」乱立

 看板の設置に関して厳しい規制を敷く米カリフォルニア州カーメル市には最低限の道路標識しかなく、旅行者にとっても心地良いという。「情報量を抑えることは、実は駅や道路の標識を設置するうえでの鍵になる」と中邑教授。

 交通ジャーナリストの岩貞るみこさんも「ドライバーに与える情報が逆に危険な状況を作り出すことがある」と、過剰な道路標識を嘆く一人だ。岩貞さんが国道1号を車で走っているときに、「東京まで○○キロ」という看板が乱立する一方、本当に欲しい観光地の案内が少なかったという。

 国土交通政策研究所が昨年、「鉄道駅等のバリアフリー化による行動変化」を調査したところ、バリアフリー化は外出機会を促進させる効果があったという。この傾向は駅周辺を含めた整備がされている駅ほど強く、乗客数の伸びにもつながっていたという。中邑教授は「点字ブロックを敷き詰めたり、駅構内の注意喚起のアナウンスを流し続けるなど、これまで福祉の世界では情報量を多く、強めることが是とされてきた。しかし、これからは本当に必要な情報をバランスよく提供することが大切だ」と話している。

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【用語解説】ユニバーサルデザイン(UD)

 1980年代半ば、米国ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス教授によって提唱された。障害の有無や年齢、性別、国籍の区別なしに、すべての人が使いやすいデザインを目指し、(1)だれにも公平に利用できる(2)使う自由度が高い(3)使い方が簡単-など7つの原則を掲げている。UDの思想は、都市空間の設計から薬のパッケージに記す使用方法まで、暮らし全般に採用。障壁(バリア)を取り除く意味で使われる「バリアフリー」と異なり、UDは対象を障害者に限定しない。

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