甘み まろ味 うま味の「基」 太田屋

甘み まろ味 うま味の「基」 太田屋

梅田敦史の日々の勉強の成果を中心に綴っていきます。

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「のし」

 

 この文字からは

僕は熨斗(のし)袋を思い浮かべます。

 

 

 



この熨斗袋の中央にある紐が水引きで、

右上の縦長の六角形が「のし」。

 

 

熨斗(のし)って

 

普段の生活ではなかなか使わない漢字だし

 

ちょっと風変わりな呼び名だなって

 

過去にふと思う機会がありました。

 

 

 最近読んだ、

 

「あわび文化と日本人」 

大場俊夫 著  成山堂書店

 

という本。

 

これを読んで

 

そう感じたことを思い出したのでした。

 

本によりますと

 

熨斗袋のあの縦長の六角形の折り紙は

 

あわびを表しているそう。

 

 

その縦長六角形をよく観察してみると

 

緻密に袋状に折られた折り紙に

 

細長いものが入っているのですが

 

 

どうやらその細長いものがアワビのようなのです。

 

 

 なぜ、アワビ??

って思いませんか。

 

 

上記の本によると

 

1個あたりの肉量が多く

残った貝殻も多用途の道具として利用でき、

さらに男女関係なく素潜りで道具も使わず漁ができるという多くの利点があって

六千年以上前の縄文時代の遺跡からも多く出土するほど

日本の太古から重宝する貝であったとか・・・

 

なるほど。

でもこれだけだと縁起物になる理由には不十分ですが、

 

 さらにこちらの本では

 

2200年ほど前の中国まで話が及びます。

 

当時は

 

あの有名な秦(しん)の始皇帝の時代です。

 

秦という国は東アジア史上最初の大帝国だそうで

 

この始皇帝時代にあの万里の長城が建設されました。

 

絶大な権力と富を手中におさめた皇帝でも

 

時がたてば老いて死をむかえなければならないということで

 

これもまた有名な不老不死の仙薬を求めることになったのです。

 

 

その仙薬が歴史家の研究によって

 

どうやら「アワビ」であるらしい・・・

 

ということになったのだそうです。

 

 

 それから1000年ほど後の日本に話は場所を戻します。

 

ときは平安時代。

 

当時の書物にはアワビが天皇や皇族の延命の食べ物として

 

取り扱われているよう。

 

この時代は中国から入った最新の知識によって

 

日本は大きく影響されていました。

 

 

 ここまでくると

 

縁起物であることは納得ですね。

 

 

冷蔵や冷凍の機械による保存方法が無かった時代。

 

このアワビはどのように保存され流通されていたのでしょう。

 

 それが熨斗袋の長細い六角形の折り紙に入れられた紐のような姿に

なぜアワビがなっているのかという答えに繋がります。

 

 

アワビの1個あたりの肉量が多いという特徴は

 

大きくて分厚い体形ということですが

 

これをそのまま干したのでは

 

分厚い肉体の中心部まで干物にすることは難しい。

 

そこで、

 このアワビを細長く切断し

 

紐のようにしてから干すわけです。

(僕の想像では干ぴょうみたいな感じだと思います)

 

 

 あとは、

 熨斗って普段使わない漢字だし・・・

 という素朴な疑問が残ります。

 

 

 これについて本では詳しく解説されておりませんでしたので

 

ebにて調べてみます。

 

 

Wikipediaによると

 熨斗とは「漢語」だそうで、

 

熨(熱でしわをのばす)+斗(ひしゃく)

即ち、アイロンである火熨斗を指す

 とのこと。

 

 「のしあわび」といわれる形状は

 

細く平たくすることによるみたいです。

 

 

 

こちらの動画を観ると

https://www.youtube.com/watch?v=khaiYVMRsbI

 

 細く平たくして乾燥して干物にして保存する

という様子がよくわかります。

 

 

 何千年ものながーい経緯があったことを知ってから

 

あの熨斗袋を思い浮かべると


いままでとは違った印象になりますね。













昆布でとったダシと

 

カツオ節でひいたダシ

 

干しシイタケのダシ

 

干し野菜でのダシなど

 

 

 

それぞれのダシを

それだけ単体でお料理に使用することって

 

あまりないです。

 

 

ダシとして使用する場合は


これらを組み合わせ、


ブレンドすることがほどんどですね。

 

 

 

 それぞれ単体を使ってできたお料理よりも

 

ダシを組み合わせて使用した方が美味しいからでしょう。

 

 

 

この日本の伝統的かつ感覚的な習慣を


化学的に解明したのが

 

ヤマサ研究所の国中明(くになか あきら)さんです。

 

ヤマサ研究所とは

「ヤマサ醤油(株)」が明治時代に設立した醤油研究所。

 

 

 

 

ところで、

 

昆布のうま味主成分が


グルタミン酸ナトリウムであることを発見し


その抽出に成功したのは


戦前の化学者、


池田菊苗(いけだ きくなえ)さんであることは有名です。

 

 


そして、

 

カツオ節のうま味の主成分のイノシン酸は


戦後間もなくに国中さんによって発見されます。

 


この方はさらに


干しシイタケのうま味の主成分である


グアニル酸も続いて発見。

 


そしてさらに、


池田さんが発見したグルタミン酸ナトリウムと


自身が発見したイノシン酸、グアニル酸を混ぜると

 

“驚異的に”うま味が増幅するという

「味の相乗効果」も発見します。

 

 


“驚異的”というのは

 

1+1=2ではなく

 

1と1を組み合わせると


7~8倍と飛躍的にうま味が増大されるということ。

 

 

 

当然、

 


それより以前から


日本人は昆布とカツオ節や干しシイタケなどの


ダシの組み合わせの美味しさには


感覚的に気が付いており

 

料理にはすでに活かされております。

 

 

 

このことを論理的に説明できる化学的発見が

国中さんによってなされたわけです。

 

 

 

 

今日、


日本は世界最高水準の科学技術立国と言われています。

 

 

科学技術というと

お料理とは別の世界のような言葉に聞こえがちですが

 

2013年に

ユネスコ世界無形文化遺産に登録された

和食も

 

 

「健康的」というだけではなく

 

 

お料理の美味しさの大事な部分である

 

“うま味”の理論を知ると

 




世界最高水準のお料理であるということが

 




とてもよく理解できました。

 

 













最近偶然、


カツオの一本釣り漁の映像を観る機会がありました。

 


カツオ漁の船に乗り込んで取材でもしない限り


実際に生で目にすることはできません。

 

映像ではその迫力に驚きました。

 

 


「鰹(カツオ)」

 



この魚は大きな群れをなして移動するので

 

漁師さんはこの群れがいるであろう海域まで行って


この群れを探す作業からはじまります。

 


その群れを見つけると


生餌として持ってきたイワシを


群れにめがけて少量投げ与えます。



すると、

うまくいけば(うまくいかないときもあるよう)


鰹の群れは興奮状態となり


一本釣りの釣り針だけの針に次々と食いつく状態が続く。

 


熟練の漁師さんだと


2秒に1匹のペースで次々と釣り上げられるそうです。




釣り針に食いついても抜けやすい形の針で、


船に上げたと同時にカツオの口から針が外れ


すぐに次のカツオを釣り上げることができるようになっています。




僕が観た映像は


赤道直下の海域で操業する遠洋漁業で、


2カ月間に及ぶ船員10数名の記録という感じでしたが

 


その10名ほどが一人一本の竿を持って群れのカツオを次々と釣り上げるのは

 


思わず凝視してしまう光景でした。

 

 



この魚は伝統的にこのような一本釣り漁法で獲るので

 

とにかく一度にたくさん過ぎるほど獲れてしまいます。

 



とうぜん一気に消費できませんから


残った大量のカツオをなんとかして保存しようということになりますね。

 



カツオが


常温で保存できる


硬い食品になった理由を目の当たりにした感じです。

 





改めて・・・

興味深い魚。

 

 

 

鰹。

 

 


その興味深いというのはそもそも

この魚はマグロに似ていまして

 

全世界の温かい海域で泳いでいます。

 

 


赤道直下から日本までは


黒潮に乗って泳いできます。

 

 


その呼吸法も似ていて、

 

多くの魚は鰓蓋(エラブタ)

 

 

 



画像の部分を自在に開閉して


口から水を入れエラを通してこの部分から水を出すことによって呼吸します。

 



それに対し


カツオやマグロは


この鰓蓋が自在に動かせない・・・

 



 口から水を入れて呼吸するためには


自分の身体を前進させることで入れ込む必要があるわけで、

 

そのため

彼らは24時間体制で泳ぎ続けます。

 


一生、


止まったら死んでしまうという存在なのです。

 




興味深いですよね。。。

 

 


鰹節という硬くて常温で長期に保存できる優れた食品の存在は



 伝統的な人間の技術によるものであることは否めませんが

 

 

カツオという魚そのものが

 


そもそも他の魚とはけっこう違う存在で

  


それが鰹節という食品が作られる要因の一つでもあるということを

 



改めて思い知らされる機会となりました。